エジソンとフォードがもたらした瞬間
私たちがこの工場で目の当たりにしているのは、トーマス・エジソンがコンクリートにもたらした瞬間であり、ヘンリー・フォードが自動車にもたらした瞬間である。つまり、巧妙な職人技でつくられていたものが驚くべき規模で量産され始めた瞬間なのである。
ここは、チリで目にした古代のリチウムかん水が新たな目的で利用され、世界を一変させる可能性のある物質になる場所なのだ。
結局のところ、ガソリンやディーゼルを燃料とする自動車やトラックの使用をやめるための対策をしなければ、二酸化炭素の排出はなくならない。2020年の時点では、温室効果ガス排出量の5分の1以上が化石燃料を使う車に起因すると考えられている。
カーボン・フットプリント(商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体において排出される温室効果ガスをCO2量に換算したもの)にこれほど大きく影響する単一の活動はほかにない。
だからこそ、人々は今日これほどまでに電池に対して執念を燃やし、この建物のような場所が非常に重要なものとなっているのである。
自動車を製造しない自動車工場
数年前までは、電池会社はひと月に500万個の電池を生産していれば大手だとみなされていた。この工場はそれだけの数を数日で生産する。
建設されてから数年で10億個以上の電池がつくられ、本書が読まれるころには、おそらく100億個を超えているだろう。
これは地球上の老若男女全員に電池がひとつずつ行きわたる数であり、そのすべてがアメリカ西部ネバダ州の荒野にある、このひっそりとした渓谷から生まれている。
ここは、世界初のギガファクトリーである自動車メーカー、テスラの「ギガファクトリー1」である。ギガファクトリー・ネバダの名でも知られている。

