あいまいな「ギガファクトリー」の定義
最近では、ギガファクトリーと名乗る建物がほかにもたくさんある。本書の執筆時点では、テスラは上海、ベルリン、テキサス、そしてニューヨーク州北部に1カ所ずつ、合計4つの別の施設を所有している。
テスラは今でもニューヨークの工場をギガファクトリーと呼んでいるが、ほかにそう呼ぶ人はあまりいない。ギガファクトリーの定義はとにかくかなりあいまいである。
その主な理由は、そもそもこの用語は、テスラの気まぐれな最高経営責任者イーロン・マスクが数年前に思いつきで使い始めた言葉であり、マスク本人の正確な定義が時間とともに変化しているように見えるからである。
しかし最近では、電池業界のほとんどの人が「ギガファクトリーとは電池を大量に生産する大規模な製造工場のことである」という広義の意味に落ち着いているようである。
その定義にのっとれば、テスラのニューヨークの「ギガファクトリー」はソーラーパネルを製造しているため、それを名乗る資格はない。
従業員は自転車で移動する広大さ
しかし、ギガファクトリー・ネバダがその名にふさわしいことは疑いようがない。
本書の執筆時点では、最終的に計画されている規模の3分の1しか完成していないが、すでにあまりにも広大であるため、従業員は工場の区画を行き来するのに自転車や三輪車を使う。
フロア全域が、電池、電池パック、電気モーターの生産に割り当てられている。でき上がった製品はすべてカリフォルニア州フリーモントのテスラの工場にトラックで運ばれ、車体にはめ込まれる。
そのとおり。この自動車会社をもっとも象徴する工場は、なんと自動車を製造していないのである。
ところが、マスクと共同創業者のJ・B・ストラウベルの狙いはまさにそこだった。ストラウベルは初期の会社を陰で支えた真のエンジニアリングのブレーンであった。
電気自動車ビジネスで本当に重要なのは、何をおいても電池をつくることである。マスクとストラウベルは、何百万人もの車好きが内燃機関を進んで手放したがるほど魅力的な自動車を製造した。
シャシー(車台)の設計における業界の既成概念に挑戦し、優れた内部電源管理システムとソフトウェア機能を開発した。これがなければ、いくら最高の電池であっても車は作動しなかっただろう。
したがって、彼らがどれほどの規模で自動車市場をひっくり返したにしても、その理由は電池技術だけで説明できるものではない。
とはいえ、もしこのネバダ州の工場でリチウムイオン電池がこれほど桁外れのペースで生産されていなければ、それは起きなかっただろう。

