水戸そのものは「居場所」ではなくなった

ここまで歩いてきて、水戸でいまも人が集まっている場所の共通点が見えてきた。マイムビルのアニメイト、京成百貨店、そして大工町の夜の街。業態はそれぞれ異なるが、どれも「そこへ行く理由」がはっきりした場所である。

一方で、姿を消していったのは、目的なく歩きながら立ち寄ることを前提にした商売だった。ぶらぶら歩き、目に留まった店へ入る。そんな回遊を支えてきた街の使われ方は、少しずつ成り立たなくなっていった。

点には人がいる。しかし、点と点を結ぶ線が切れている。そのことを象徴する場所が、水戸市民会館と京成百貨店を結ぶペデストリアンデッキだ。豪華な建物をつなぐ陸橋だが、人通りはほとんどない。

京成百貨店と水戸市民会館を結ぶペデストリアンデッキ
筆者撮影
京成百貨店と水戸市民会館を結ぶペデストリアンデッキ。施設同士は直結したが、人の流れは周辺へ広がりにくい

2023年に開館した水戸市民会館は、かつて旧京成百貨店が建っていた場所にある。志満津呉服店を起源とする京成百貨店は、2006年に現在地へ移転し、旧店舗の跡地に市民会館が整備された。現在は2階部分のデッキで京成百貨店と直結している。

人の流れをつなぐ仕組みは整った。それでも、市民会館を訪れた人波が、そのまま京成百貨店や周辺の商店街へ流れていく光景はほとんど見られなかった。

接続はしたものの、連続はしていない。通路があっても、人が途中で立ち止まりたくなる理由がなければ、街は通り過ぎるだけの場所になってしまう。

水戸が問われているのは人が歩きたくなる街を作れるか

水戸市も、手をこまねいているわけではない。立地適正化計画(第2次)では、居住誘導区域内の人口密度を2023年度の1ヘクタール当たり48.7人から、2033年度には50.3人へ維持・向上させる目標を掲げ、コンパクトシティを進めている。駅前ではマンション建設も進み、「買い物に来る街」から「暮らす街」への転換を図っている。

実際、変化の兆しはある。「令和5年度 水戸市歩行者通行量調査報告書」によると市民会館が開館した2023年度、中心市街地の歩行者通行量は前年度比26%増の11万2941人と、10年ぶりに11万人台を回復した。市民会館のある地区の休日の通行量は前年の3.6倍。

来館者は開館からわずか半年で約63万7千人に達し、初年度目標の60万人を早々に上回った(日本経済新聞2024年1月15日付)。直近の2025年度の通行量も12万3595人と、前年度比6.0パーセント増えている。街を訪れる人は、確実に戻りつつある。

それでも、住むことと、歩きたくなる街になることは必ずしも同じではない。実は水戸では、2005〜06年にもマンション建設ラッシュが起き、中心部の三の丸地区の人口が9年ぶりに7000人台を回復したことがある(日本経済新聞2006年12月26日付)。

しかし、その居住人口の回復が、街を歩く人の流れを取り戻すことはなかった。マンションが建ち、人口が維持されたとしても、人々が車で郊外へ買い物に向かうなら、点と点を結ぶ線は生まれない。

だからこそ、問われているのは新しい商業施設を建てることではない。人の流れを、もう一度「線」として街につくり出せるかどうか。人が歩きたくなる理由を、街の中に取り戻せるか。その問いに対する答えが、水戸の中心街のこれからを左右することになる。

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