花街の駐車場は“昼からほぼ満車”
大工町に近づくにつれ、街並みはさらにレトロになっていく。閉店したままの店が増え、廃業した風俗店の看板も残っている。大工町は、水戸城下町の外縁に発展した歴史ある花街だ。城、職人町、そして盛り場という城下町の空間構造は、いまも地名や街並みに面影を残している。
通り沿いにはビジネスホテルが目立つ。行き交う人も、観光客というより出張で訪れた会社員が多いのだろう。観光地のように街歩きを楽しむ場所ではない。そんな印象を受ける。ところが、意外な光景があった。
花街の駐車場が、昼過ぎからほぼ満車だったのだ。夜になれば、風俗店やキャバクラ、居酒屋へ向かう人たちでにぎわうエリアである。廃墟や空き店舗が点在する一方、その奥では夜の街がいまも機能していた。
考えてみれば、不思議なことではない。風俗店もキャバクラも居酒屋も、「そこへ行く」という目的があって初めて成立する商売である。買い物は郊外のショッピングモールやインターネットでも済ませられる。しかし、飲み会や接待、遊びの場は、その場所まで足を運ばなければ始まらない。
前編で見た構図と重なる。施設の中で人が集まっていたのは、スーパーやアニメイト、カードショップのように「目的がある場所」だった。そして街の中でも、人が集まっているのは目的を持って訪れる場所だった。
その対照的な存在が、大工町に残る城の形をした建物だ。1980年にソープランド「クイーン・シャトー」として建てられたが、7年で閉店し、以後35年にわたって廃墟として立ち続けた。2022年、大手グループが約10億円を投じて改装し、ソープランド(現「マリン宮殿」)として蘇ったものの、2026年1月、グループの一斉閉店とともに再び廃墟に戻った。
街を歩いていると、投資額の大きさが街を生かすのではないことが見えてくる。人が繰り返し足を運ぶ理由を持てるかどうか。その違いが、街に残る場所と消えていく場所を分けていた。



