高血圧・高血糖は腎臓にとって「地獄」

私が腎臓病治療における運動の重要性を訴え始めた頃は、安静第一の考えが揺るぎない常識として君臨していました。それから四半世紀ほどの間に常識は大きく転換しました。今や運動療法は主要な治療法として定着し、私が考案した腎臓リハビリテーションも、全国で普及が進んでいます。

これほどまでの変化が起こったのは、慢性腎臓病のあらゆるステージで運動の効果が現れることが、国内外で次々と報告されたからです。2022年には、それまでに報告された数々の研究結果を総合的に解析した論文が発表されています。それは、継続して取り組む有酸素運動によって、腎機能や血清クレアチニン、尿たんぱくや血中尿素窒素などの数値を効果的に改善できるという内容でした。

腎臓は常に大量の血液が流れ込むため、血液の状態に大きく影響されます。高血圧や高血糖を抱えていると、腎臓からすれば“ブラック企業”に身を置いているような状態です。糸球体の毛細血管に過剰な圧がかかり、フィルターの役割を果たしている細胞(タコ足細胞)がはがれ落ちてしまいます。

「運動は毒」から「安静は毒」へ

これとは正反対の状況を作り出すのが運動です。運動で血流が改善されると、タコ足細胞がはがれ落ちにくくなり、ろ過機能が保護されます。この効果は、健康な腎臓にも弱った腎臓にも等しくもたらされます。運動はまさに、腎機能を守ってくれる“救世主”のような存在なのです。

運動療法や腎臓リハビリテーションは今でこそ多くの施設で導入されていますが、最初から好意的に迎えられたわけではありませんでした。運動は毒だと考えられていたからです。しかし、この常識は現在では大きくくつがえされています。体に毒なのは安静のほうだったのです。

朝一緒に歩く2人の女性
写真=iStock.com/AJ_Watt
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