丸1日動かないだけで筋肉量が2%低下

安静第一が常識だった背景には、それなりの理由がありました。運動をすると、腎臓に負担をかけるたんぱく尿が出るからです。しかし、私が研究を続けるなかで判明したのは、運動にともなって出るたんぱく尿は一時的なものにすぎず、長期的に見ると運動によって腎機能が守られるということでした。

上月正博『長生きは腎臓が10割 腎機能を高めて健康寿命を延ばす最高の習慣』(Gakken)
上月正博『長生きは腎臓が10割 腎機能を高めて健康寿命を延ばす最高の習慣』(Gakken)

また、たんぱく尿のある人が入院して絶対安静で過ごすとたんぱく尿は減少しますが、この変化も一時的なもので、腎機能が改善されるわけではありませんでした。

効果の面で運動に軍配が上がるとなると、浮き彫りになるのは安静のデメリットです。ネフロンが加齢とともに数を減らすように、筋肉の量も年をとるにつれて減少していきます。30代以降は年間で1%ずつ減っていくのが一般的ですが、安静にしているとこのスピードは一気に加速します。体を動かさない絶対安静の状態で丸1日を過ごすと、筋肉量が2%低下するという衝撃的な研究報告もあるほどです。

血液量が減り、腎機能が低下する悪循環

このことは、腎機能が弱っている人にとって大問題です。特に高齢の患者さんにとって筋肉量の減少が進むことは、サルコペニアやフレイル(身体機能や認知機能が低下し、健康な状態と要介護が必要になる間の状態のこと)のリスクが高まることを意味します。体が弱った先に待ち構えるのは、寝たきりや要介護状態です。

さらに、筋肉量の減少は腎機能の低下まで招きます。筋肉が減ると血液を全身に循環させる力が弱まり、腎臓に流れ込む血液の量も減少します。流入する血液の量が不十分になると、ろ過機能が低下し、短期間で腎臓病が悪化してしまうのです。そうすると、さらに筋肉量は減り、腎機能も低下していくという悪循環を招くことになります。

安静という言葉には優しい印象がありますが、見方を変えればただの運動不足です。いうまでもなく、運動不足は生活習慣病など、さまざまな病気のリスクを高めます。安静第一では腎臓を守れないどころか、寿命を縮めてしまうのです。