タイパを価格に反映した
コンビニができた当時は、「価格破壊」を唱えたダイエーなどの総合スーパーが全盛で、大きな店に大量の商品を並べつつ、価格競争を繰り広げて安さを競う時代だった。そんな時代に、鈴木セブンは、利を削る競争に明確に不参加を表明、これまでにない新しい「閉鎖商圏」の世界を作ろうとしたのである。言い方が悪いかもしれないが、利便性、今で言うタイパを実現することで、その時間価値を価格に反映する、というものであり、そのためにはこれまで世の中に存在していない「時短」を商品化して、その分の「適正利潤」を乗せて売った、ということなのだ。
おにぎりも弁当も家で作って持っていくもの、というのが当時の常識であり、そんなものを商品化して売っている店はなかった。でも、多忙なビジネスパーソンが多くなり、朝そんな時間があれば寝ていたい人は増えつつあったし、その時間をカネで買えるならそのほうがいい、という判断も増えていく。
そもそも、単身者にとっては食事を一人分作ることは割に合わないという感覚もあり、こうした時短商品は相当数の消費者に受け入れられた。就労人口の増加、単身世帯の増加という背景が需要の拡大に直結したため、コンビニは新たな需要=食の外部化需要を開拓し、取り込むことに成功した。こうした需要創出の方向性自体を新たに生み出したのが、鈴木セブンであった、ということができるのだろう。
鈴木モデルコンビニの市場飽和
時間価値の提供方法の進化はそのキャッチフレーズの変化からもうかがえる。初期のセブンは「あいててよかった」であったが、その後「近くて便利」に変わり、今は「明日の笑顔を 共に創る」となっている。昔はスーパーや商店が閉まっている深夜早朝も開いている、ということがウリだったのだが、その後、商品・サービスを充実させて店舗数を増やすと、近くて便利という、まさにタイパをアピールする店であることを宣言するようになった。
今では全国に普及するインフラとなったコンビニは、社会との共創をテーマとしているのだが、それはタイパ機能の充実が一段落し、機能による差別化は難しくなっていることを示している。これこそがインフラにまで行き渡った≒鈴木モデルコンビニの市場飽和、を暗黙に皆が分かっている、ということでもあろう。

