日本とは真逆の「自国民を守る」仕組み

例えばシンガポールには公務員だけでなく民間も対象とする「汚職防止法(PCA)」があり、金銭の授受はもちろん契約の獲得や雇用を含む、あらゆる便宜供与が規制されている。違反すれば首相直属の独立した捜査機関「汚職調査局(CPIB)」に摘発される。このリスクがあるため、企業も公職も接触自体に慎重にならざるを得ない。結果として、外国人を雇用する際には自国の労働者に不利にならないよう雇用主が1人あたり月8万円程度の税金を支払う「外国人雇用税」という制度もある。雇用主に助成金を与えて受け入れを促進する日本とは真逆の対応だ。

ポーランドは、EU圏でありながら文化的背景が異なる非欧州圏の移民の流入を極力制限し、移民問題が少ないとされる。現在は左派政権であるにもかかわらず抑制的な移民政策を実行できるのは、同国の選挙制度が大きく関わっていると考えられる。同国の下院は議席のすべてが比例代表制で、国民の声が反映されやすい。死票が少ないため投票行動を促しやすく、前回23年の選挙では投票率74%を記録した。

第一勢力以外を排除する小選挙区制で見られるような、「主要政党が事実上移民推進で反移民の選択肢がなく、自動的に追認したことにされる」といった事態が起きにくい。大統領選挙も1回目の投票で過半数の得票が得られない場合は上位2名による「決選投票方式」であり、日本の首長選のように、“組織”の上積み分で現職優位ポジションを獲得できず、民意の多くを無視できない仕組みになっている。

「性悪説」を前提にシステム構築せよ

また、ポーランドでは、陳情活動をする場合は登録と活動の申告が必要で、その内容は公開される制度もある。「便宜供与がないなら陳情行動自体に問題はない」とする日本とは、企業と政治の距離感がまるで違う。

シンガポールとポーランドに共通しているのは、スーパー政治家の登場に期待するのではなく、制度そのものが企業との一定の距離感を保ち、民意を無視できない仕組みを備えている点だ。「人間は誰しも身内に甘く、環境で変わり、自らが有利な制度を温存する」という性悪説を前提に、誰が権力を握っても一定程度は民意に従い、合理的な判断を下さざるを得ない「システムを構築」しているのだ。心地よい性善説を前提に、議場以外のブラックボックスの環境を残せば、議員にとっては、その環境を利用した国民への利益相反行為が生存戦略になってしまう。

その結果、「国民のために企業が負担するのではなく、企業のために国民が負担する政治」が続いてしまうのだ。

移民政策が進むのは合理的な判断の結果ではなく、国民に見えない陳情の物量が影響力を持てる環境によるものではないか。であれば、正論を積み上げることよりも、偏りが大きい陳情環境と、国会議員や首長を決める1人区選挙とその方法そのものを見直すことが先決のはずだ。しかし日本では、逆に比例に限定した定数削減が検討されている。果たして、この国はどこへ向かうのか――。

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