米コーネル大研究でわかった不都合な真実
米コーネル大の社会心理学者ヴァネッサ・K・ボーンズ教授らの実験によれば、この「対面での依頼」はメールに比べて34倍も成功率が高いという。移民政策をはじめとする企業本位の政策が進む要因として、理屈や正論ではなく「対面陳情の物量」自体が政策に影響を与えている可能性があるのだ。もちろん、この34倍を覆した例もある。昨年夏のアフリカ・ホームタウン構想や、福岡県朝倉市の外国人向けマンション建設計画は、多くの市民の抗議が自治体に直接寄せられたことで撤回された。これらは地域が限定され、多くの“当事者”が存在した政策だったからとも考えられる。
しかし企業側は、仕事として時間と資金を投じて日常的に政治家と接点を持ち続けられる以上、簡単に巻き返せるだろう。政治献金やパーティー券の購入は、こうした面会機会を得る手段になっているのは言うまでもない。もちろん、一般的な政策ならそれでもいいが、労働や賃金、将来的な民族構成や日本社会の在り方に影響する移民政策まで、国民不在で、営利目的である企業側が大きな影響を与えられるなら問題だ。
小野田紀美大臣がSNS投稿した「本音」
外国人政策を担当する小野田紀美大臣は、今年1月、自身のSNSで「経団連云々ではなく、地方自治体の首長も、様々な職種の業界も、農林水産業も、とにかく外国人労働者を入れてくれという要望は各所からひっきりなしにあります。ネットの中では見えないかもしれませんが、外国人労働者を求める声も、同じ日本国民から多数受けているのは事実なんです」などと投稿している。
この投稿のポイントは、実施された政策を見れば、要望の優先順位が国民ではなく業界団体にある点、そして業界団体は政治家に「要望を直接届ける手段」があるという点だ。一方で、賃上げが阻害される労働者や受け入れ負担の当事者にはその手段がほぼない。便宜供与などなくても、企業側が独占的に政治家と接点を持てる環境自体に、企業本位の政策へと偏る原因が見出せる。
株主資本主義が色濃くなった現在、企業の利益は平成前半までのように労使一体的なものではない。利益の行先は賃金ではなく、株主配当や内部留保に大きく偏っているのは統計上の事実だ。会社が豊かになったからといって、庶民も豊かになる、という時代ではもうない。労働者の賃金や仕入れ経費は、経営合理性の名のもとに削減対象なのだ。

