「突き抜けた人物」が必ず存在するという法則
複数のクライアント支援を続ける中で、もう1つ重要な発見があった。現場を学習する場所に変えることに成功している企業には、必ずと言っていいほど、特定の「突き抜けた人物」がいるという事実である。しかも面白いことに、それが特定の業種や規模の会社に限られるのではなく、複数の異なる業種で共通して見られるパターンだった。
典型例を、複数の事例から抽出してご紹介したい。ある企業では、この人物はまず2次元の従来設計では中国競合の納期短縮に対応できないと判断し、工場や機械を3次元で丸ごとコンピュータ上に再現するデジタルツインの導入を主導した。そして、導入した同ツールを動かしているうちに、「この仮想空間に、ヒューマノイドを入れられるじゃないか」と気づいた。仮想空間で試験的にロボットを動かしてみせて上層部に見せたところ、経営トップが「実機を買え」と即断し、複数台のロボットが導入されることになった。
驚くのは、こうした重要な意思決定が、稟議のような重い組織プロセスではなく、属人的に、経営トップ直結の形で進んでいくことだ。周囲の管理職ですら「そんなことをやっていたんですか」と後から驚くケースが少なくない。同様のパターンは、業種の異なる別のクライアント先でも複数目にしてきた。
学習する工場を作れる優秀人材とは?
私はこれまで多くの日本企業を戦略コンサルタントとして見てきたが、フィジカルAI時代に本当に必要な資質を体現している人物には、なかなか出会えない。この人物たちが現場を突き抜けている理由を、私なりに分析すると、いくつかの要素が同時に揃っている。
まず、テクノロジーへの深い理解がある。デジタルツインにしても一般化が進んでいる側面もあり、実は高度な技術知識がなくても動かせる設計になっているのだが、そのツールで「何ができるか」を発想し、自社の課題と結びつける発想力は、テクノロジーの本質を理解していなければ生まれない。手を動かして触ってみて、「ここまで簡単にできるなら、あれもこれも試せる」と直感的につかむ経験が、突き抜けた発想の土台になる。

