労働者は困窮しているが企業は儲かっている
さて、その一方で、企業の本業以外の収益となる「営業外収益」は近年、大きく増え、当期純利益と株主への配当金は7~8倍になり、純資産も大きく増加しています。
「本業の稼ぎが増えなくても、儲けである純利益が増えている」状態ならば、株主からも文句は出ないでしょう。日経平均株価が近年、バブル時の水準を超えて過去最高を更新している背景には、こうした事情が隠れているのです。この現象は、日本企業が国内よりも海外で稼ぐようになり、海外事業からのリターンが増えることで利益や資産(主に投資有価証券)が増えていることと関係しています。
つまり、日本企業の状態を一言でまとめると、「そこで働く労働者は困窮しているのに、企業はむしろ儲かっている」という、非常に奇妙なものになります。
このねじれた関係性が、日本経済の停滞感に大きく影響しています。
企業からすると、国内事業以外で利益が増えているわけですから、わざわざ国内事業での付加価値が増えない中で、労働者の給与を上げる動機がありません。むしろ、人口が減り市場が拡大しない日本では、できるだけ安い労働力で既存の事業を維持しておいて、金融や海外で利益を増やそうとしてきました。企業にとっては都合の良い労働者を確保しやすい環境が続いたことはすでにお伝えした通りです。
これが、日本の労働者の給与が上がってこなかった根本的な事情です。
私たちの給与が上がらないワケ
本記事では失われた30年の中で、日本では人の仕事に価値が認められにくく、労働者の仕事が安売りされて困窮する人が増え、さらに社会全体としても寛容さが失われ、不幸せな人が多いネガティブな状況に陥っていることが確認できました。
仕事の金額的価値でもあり、給与の原資ともなる付加価値が停滞してきたのが根本的な原因といえそうです。
一方で、企業は付加価値が増えなくても利益が増えています。つまり、「稼ぎは増えないけれど、儲けが増えている」のです。
儲けが増えて困っていない企業と、稼ぎの分配である給与が減り困っている労働者で、利害が一致せずねじれた関係となっています。
日本人がネガティブな状況から脱するには、日本の企業活動が「稼ぎと分配が増えないけど儲かる」状態から、「稼ぎも分配も利益も増える」状態へと変化するのがキーポイントとなりそうですね。
そのためには、誰が、どのように振る舞っていけばよいのか、さらに仕事の本質とは何かを明らかにする必要があります。



