「GDPの停滞」は実は特異なことである

GDPは各国の経済規模を測るのに最もよく用いられる経済指標でもあります。

日本は長い間米国に次ぐGDP世界第2位の経済大国といわれてきましたが、停滞が続くうちに2000年代に中国に抜かれ、2023年には人口が約7割のドイツに抜かれて大きな話題になりました(図表4)。

2026年にはインドにも抜かれ、近いうちに英国にも抜かれるのではないかといわれています。日本のGDPの停滞は、国際的に見ても特殊な状態です。

それはつまり、日本だけが長期間、付加価値が増えなかった、ということです。良いモノやサービスを安く大量に生産し、消費してきたはずなのに、付加価値としては増えてこなかったのです。

安くなった分だけ数量的な経済規模が拡大してきた一方で、その分働く人が無理をして疲弊し、ギスギスとした社会に変化してきたともいえます。

図表5で示した1人あたりGDPは、GDPを総人口で割った数値で、各国の1人あたりの平均的な経済水準を表す代表的な指標です。そして日本の数値はOECD38ヶ国中26位と、平均給与と同様に、先進国の中でも下位の水準です。すでにリトアニアやイスラエルを下回り、他のG7諸国との差も大きくなっていますね。

なお、1997年にはOECD中6位で、G7の中でも米国に次ぐ水準でした。やはり、日本人の平均的豊かさは相対的に低下し続けています。

日本人の労働生産性は米国人の約半分

もう1つここで確認しておきたい重要な観点が、「労働生産性」です。

労働生産性とは、一定期間に労働者が働いて生み出す付加価値です。これは、「どれだけの価値が、効率よく労働者によって生み出されているのか」を測る指標です。

GDPを、働いていない子供や高齢者も含めた総人口で割った指標が1人あたりGDPであるのに対し、労働生産性は、実際に働いている労働者の人数や総労働時間で割った数値ですから、経済活動の効率を測る上で特に重要です。

私たち働く人にとっても、仕事とより密接にかかわる大切な指標です。

日本は労働生産性が低いといわれますが、数値でも確認してみましょう(図表6)。

GDPを総労働時間で割った労働時間あたりGDPは、労働生産性の代表的な指標です。2023年の日本の労働時間あたりGDPはOECD38か国中26番目です。東南欧諸国と同程度で、米国やドイツ、フランスの6割程度とかなり低いことが見てとれます。

米国の労働者が平均して1時間に100ドル近くの付加価値を生み出すのに対して、日本ではその半分強にすぎません。

1997年の時点では日本の労働時間あたりGDPは22位だったので、じりじりと国際的な順位も下がっています。ただし、すでにご紹介したように平均給与や1人あたりGDPが当時15位以内だったことと比べると、昔から日本の労働生産性はそれほど高くなかったことが窺えます。