株価だけ好調の日本

そんな日本ですが、1つだけ、好調な要素があります。それが企業です。

仕事を通じて社会に価値を提供し、労働者にその対価を給与として分配するのは企業です。労働者の仕事の価値が停滞すれば利益も減りそうなものですが、日本企業については昨今、「過去最高益を更新」とか「内部留保が増え続けている」といったニュースをよく聞きますね。

労働者のやる気がなくなり、多くの人が困窮する一方で、企業は好調。とても奇妙な状況です。

いったい日本の企業では何が起こっているのでしょうか?

日本企業の変化を数値で確認すると、このからくりがよく理解できます。

図表7の労働者1人あたりの企業活動の変化を見ると、日本企業は、稼ぎである付加価値は増えない一方で、儲けとなる利益や資産が増えていることがわかります。

長い間企業の投資が増えてこなかった

日本経済のピークとなった1997年からの変化を見ると、日本企業の付加価値も給与総額も横ばいが続いてきました。これは、今までご紹介してきたGDPや平均給与が停滞してきた事実と符合します。

また、通常、企業は機械や設備などの固定資産に投資して生産能力を強化し、付加価値を増やしていきます。これらの投資は高額なので、一般的には借入をして費用を賄います。

つまり、正常な経済であれば、付加価値の増加とともに企業の借入や固定資産残高も増えていくのですが、日本企業は長期間、国内での事業投資を増やしてこなかったのです。

このように表現すると、「企業が投資を増やさなかったから経済が停滞してきたのだ」と解釈できそうですね。そのように発言する専門家も多いようです。

しかし、関連する統計データを整理すると、事情はもう少し複雑です。むしろ、企業の投資が減らなかったからこそ経済が停滞してきた面もありそうです。

この投資と付加価値の関係については、書籍で詳しくご紹介しますので、ここではひとまず、「企業の投資が増えてこなかった」事実だけ認識しておいてください。