一見ローカル食堂のステルス北レス
さらに筆者を驚かせたのは、一見すると北朝鮮資本とは全く分からないよう擬態した「ステルス北レス」の存在だ。
中朝国境に位置する吉林省延吉市は中国の朝鮮族が多く住むエリアだが、ここにある「羅宮羊肉串」は、店名に「朝鮮族焼串」と冠しており、当地名物の羊肉串を出す一般的なローカル食堂にしか見えない。
しかし、店内で立ち働くのは正真正銘の北朝鮮人従業員だ。メニューには北朝鮮産のビールや焼酎、平壌名物の冷麺や温麺が並ぶ。名物の串焼きも、溶き卵につけてユッケ風に食べさせるなど、北朝鮮料理からの着想が垣間見える。現在、中国各地で「朝鮮族料理」や「ローカル串焼き店」を謳い、巧妙に正体を隠蔽しながら外貨を稼ぐステルス店舗が増殖しているのだ。
上海にある銭湯+食堂の「湯連得」
そのカモフラージュ戦略は、ついに飲食店という枠すらも飛び越えている。上海市内に複数店舗を展開する「湯連得」は、なんと日本式のスーパー銭湯(温浴施設)である。施設に入ると受付の奥にはチマチョゴリの体験コーナーという不釣り合いな空間が設けられており、巨大な飲食・休憩スペースに出ると、そこでは北朝鮮人の女性従業員たちがせわしなく働いている。ちなみに、本場さながらのアカスリサービスは、なぜか北朝鮮人ではなく、ガタイの良い中国人が担当していた。
日本のスパ銭よろしく整備された食事処のメニューは、まさかの朝鮮料理づくしだ。平壌冷麺に混じって、「総合火鍋」という当て字で韓国の「プデチゲ(部隊鍋)」まで提供されているのが何とも皮肉で面白い。さらにここでも在日コリアン由来の「オムライス」を発見して注文すると、上に甘い生クリームがトッピングされているという自由奔放な一皿が登場した。
日本人客が少ないからか、従業員に出身を尋ねると珍しく雑談に応じるルーズさがあり、「知っている日本の有名人は豊臣秀吉」と笑って答える彼女たちの姿には、制裁下を生き抜くしたたかさと人間臭さが同居していた。



