将来の「ナフサ危機」にも備えるべき

石油危機では意外な物資が不足することも考えておかなければならない。当初、備蓄に余裕があるとされていた日本では「ナフサ危機」に直面することになった。世界最大の産油国のはずの米国でも、エンジンオイルや潤滑油の多くを中東産原油に依存していたせいで、品薄や値上がりに見舞われている。

こうした一部の石油製品が不足した場合、石油供給が完全に途絶していなくとも、米国内の事情で、米国産原油の日本向け輸出に制限がかかるケースもあり得るだろう。

日本はこうしたリスクを前もって想定しておくべきだ。

政府と民間合同で今回のナフサショックの総括を行い、戦争による供給途絶、産油国それぞれの国内政治、日本国内の売り惜しみや買いだめの心理など、あらゆるシナリオを検討し、官民が提携して対応する体制を作っておくのは必須だろう。

一方で、過度のパニックは必要ないと思われる。

イスラエルのレバノン攻撃継続や、イランのホルムズ海峡再封鎖の脅迫にもかかわらず、原油価格は70ドル近辺へ下落し、かなり落ち着きを取り戻している。

ホルムズ海峡封鎖下でも、米軍の護衛の下、最大1億バレルという大量の原油がホルムズ海峡をすり抜けていたとも伝えられている。また、ホルムズ海峡以外の経路を通る「代替ルート」も発達している。

「石油余り」の可能性もある

今後世界はむしろ「石油余り」に向かうという予測もある。

米エネルギー情報局(EIA)は、世界的な石油需要の減少が、ホルムズ海峡の混乱による原油価格上昇を抑制するとの見通しを示している。

また、国際エネルギー機関(IEA)も、2027年に原油の世界市場が大幅な供給過剰に転じると予測している。

ちなみに、半減した戦略石油備蓄だが、すでに再建がはじまっており、積み増しは今年後半から2027年にかけて加速する見込みだ。

今回の備蓄放出は、南部テキサス州とルイジアナ州のメキシコ湾沿いにある4カ所の政府貯蔵施設から、石油を民間企業に貸し出すという体裁で行われている。

石油の米国依存はやめるべき

米政府から石油を借りた企業は、借りた1億3300万バレルの原油に、プレミアム、すなわち利息として24%(4000万バレル)を追加した量を返却することが義務付けられている。

この返却により、戦略石油備蓄はかなり早期に元の水準まで戻ることが予想される(借り手の民間企業は、政府から借りた原油を高値で捌くことができ、返却する分は和平後の安値で調達できる)。

米政府の予定では、2029年をめどに、施設キャパシティの7億1400万バレルに近い6億バレルまで回復させるという。

もちろん、短期的には供給される石油が戦略原油備蓄の積み増しに回るため、原油価格が押し上げられる可能性もなくはない。

ただ、米国の戦略石油備蓄が元の水準まで回復すれば、再度石油危機が発生したとしても、日本への輸出制限や禁輸を心配する必要はなくなるだろう。

こうした環境下において、日本が中長期的に米国産の原油を市場で調達する分には、あまり心配は要らないだろう。

米投資銀行パイパーサンドラーのグローバル・エネルギー・ストラテジストであるジャン・スチュアート氏も、「われわれは産油国だ。備蓄を取り崩しても十分な産出量がある」と、楽観的な見通しを述べている。

とはいえ、それはあくまでも現時点での見通しに過ぎない。今後どのような事態が起きるかは分からないため、日本は石油の米国依存を早期に脱するため調達先の多角化に動くべきだ。

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