米国世論が怒った「ガソリン価格高騰」
こうした批判の根底にあるのが、イラン戦争開始後に起こった米国内におけるガソリン価格高騰問題だ。
イラン戦争開始後に発生したホルムズ海峡封鎖の影響で石油供給が逼迫した影響は、石油輸出国である米国にも直撃した。
米国ではガソリン価格が高騰しており、5月初めには全米平均価格が4ドル50セントと、開戦前の1.5倍の水準を突破してしまった。
その後も高止まりを続けており、イランとの和平交渉合意報道が出た6月中旬になりようやく4ドルを割ってきたものの、まだまだ高値圏にとどまっている。
日本ではガソリン価格抑制策として、補助金の支出によって強制的に価格を下げるという方法がとられたが、トランプ政権は戦略石油備蓄の放出によってガソリン価格を抑えようとしてきた。
ただ、3月16日以降、米戦略石油備蓄を大量に放出したものの、ガソリン価格を下げるには至らなかった。
米国の戦略石油備蓄は半分以下に
一方、備蓄の大量放出によって、戦略石油備蓄の在庫は大きく減少。6月12日には3億4025万バレルと、1983年以来22年ぶりの低い水準まで低下した。
トランプ政権は現在も週900万バレルのペースで備蓄を放出している。備蓄の残りは全体の47.7%と、半分を切ってしまった。総計1億3300万バレルを段階的に放出する計画の下、120日間の予定で開始された取り崩しは、7月も継続する見込みだ。
欧州の調査企業ケプラーが米税関統計を基にまとめた推計では、放出された米備蓄のおよそ4割が輸出に回されたという。
ケプラーで上席石油アナリストを務めるマット・スミス氏は、「米国は、世界に対する原油の『最後の売り手』(supplier of last resort)になった」と評する。
この米国の役割を、「スイングプロデューサー(swing producer、供給安定をもたらす産油国)」と言い替えることもできるだろう。
世界で巻き起るイラン戦争への批判を抑え込むため、石油備蓄を海外に輸出せざるを得ないという面もあるのかもしれない。4月には米戦略石油備蓄の主な輸出先は欧州同盟国や友好国であることが明らかになっているし、原油不足が深刻であったフィリピンなどアジア諸国にも輸出されていることが5月に判明している。

