石油備蓄はあくまで「米国のため」

ただ、戦略石油備蓄はガソリン価格抑制のためにあるわけではなく、米国外の批判を抑え込むためでもない。あくまで米国のエネルギー供給の安定化のためにある。

米議会が定めた米戦略石油備蓄の本来の目的には、「エネルギー供給の重大な中断による米国の脆弱性を最小化すること」とある。

備蓄制度が創設されたのは第1次オイルショック後の1975年だが、当初、米議会は連邦政府に対して最大10億バレルの備蓄を義務付けていたが、維持コストが高すぎたため、1979年に7億5000万バレルへ減らされた。2026年現在、運用可能な備蓄能力は7億1400万バレル分となっている。

にもかかわらず、トランプ政権は、本来の目的ではない「物価抑制」、および「外国のエネルギー安全保障」のために、備蓄石油を放出している。

そうした対応への批判もこめて、「日本を含む諸外国に石油を輸出するな」という論調が巻き起こっているというわけだ。

石油備蓄はあくまで「米国のため」(トランプ大統領、2026年6月25日)
写真=EPA/時事通信フォト
石油備蓄はあくまで「米国のため」(トランプ大統領、2026年6月25日)

「石油危機第二幕」の可能性がくすぶる

米戦略石油備蓄が歴史的な低レベルまで落ち込んでいる中、米国産石油が今後も安定して輸出され続けるかどうか保証はない。

石油危機はさまざまな理由で起こりうる。ハリケーンなどの自然災害による精製所の操業停止やパイプラインの故障といったことでも、石油の供給量は大きな影響を受ける。

また、イラン戦争の再燃リスクは依然として高い。その場合、ホルムズ海峡の再封鎖や、イエメンのフーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡の封鎖により紅海でも航行の安全が妨げられる可能性もある。

さらに今後も中東情勢の不安定化が続けば、スエズ運河の航行制限、産油国リビアやナイジェリアにおける内戦など、紛争のさらなる拡大もあり得る。

また、こうした要因が単独ではなく、複数重なってくる可能性も否定できない。

そうした場合、米石油備蓄をさらに取り崩そうにも、十分な石油備蓄が残っていない、というシナリオもあり得るわけだ。その場合、「石油を輸出するな」という米国世論に沿って、米国産石油の輸出制限、あるいは禁輸措置がとられる可能性がある。