「一回限りの人生を謳歌したい」

2026年3月、伊勢市内の廃校をリノベーションした複合施設「神社Cheers」がオープンした。三重県知事や伊勢市長と並んでテープカットを行う鈴木氏の姿があった。

知事や市長と共にテープカットを行う鈴木社長
画像提供=二軒茶屋餅角屋本店
知事や市長と共にテープカットを行う鈴木社長

鈴木氏が今後の投資分も含めると総額で約1.5億円を投じて立ち上げたこの施設は、「混ぜて、醸す、未来の実験場」をコンセプトに、スタートアップや地域企業、研究者、学生などが集まり、切磋琢磨する場だ。ビール事業の創業期、何をして良いかわからず誰にも相談できなかった自分と同じ悩みを抱える人たちに、壁打ちができる場所を提供したいという原体験が背景にある。

事業規模の拡大も着々と進む。

2024年度の売り上げは14億円、2025年度は16.8億まで伸びており、20%の増加だ。売り上げの拡大はすべてビール事業によるものであり、祖業である餅事業の占める比率は4%にまで下がっている。2026年度の売り上げも好調であり、20億円を超える見通しだ。13カ国への輸出、東南アジアでの現地生産、M&Aによる多角化――2033年に売り上げ100億円を目指す。

創業から29年。鈴木氏の言葉に、経営者としての覚悟がにじむ。

「若い頃は純粋に自分が造ったビールを世に問いたいと考えていました。私自身、このたった一回限りの、それもどんなに長くても100年くらいしかない人生を精一杯謳歌したいという気持ちが強かったのです。しかし、いつの頃からか、社員たちも同じだと気づきました。彼ら彼女らもやっぱりたった一回限りの人生なんです。だから、人生を謳歌できる舞台としての場所を社長としてしっかり守っていってあげたい。さらにもっと大きな舞台で活躍できるように、会社という装置も大きくしなければいけない。それが、今私が社長を続けている一番のモチベーションです」

1575年に茶店として開かれた“餅屋の暖簾”は、450年の時を経て、世界へと向かっている。

鈴木社長
筆者撮影
餅店から世界を目指す。力強く語ってくれた
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