2010年代とは違う低価格戦略の中身
低価格戦略についても、十数年前とは種類が違うもののようだ。
「インフレで給料も上がらない中であるなら、われわれはなるべく値上げをせず、お客様に来ていただける店にしようという考えでやっています。10年以上前の当時もわれわれとしては競争のつもりはなく、自分たちのできる努力の中で価格低下を図っていました。しかし業界全体で無理をして低価格戦略に挑んでいた、という側面があります。
物価が上がり続けている今はもう、そんな甘い状況ではないわけです。皆さんが値上げをしている中で、価格を維持している私たちの店舗がご支持を頂いているということだと思います」
また居酒屋から撤退とはいかないまでも、方針転換を印象付けたのが、コロナ禍での唐揚げ業態のスピード展開だ。当時は居酒屋業が軒並み打撃を受けており、渡邉氏自身、鳥メロやミライザカなどの居酒屋についても「将来的には残らないかもしれない」と悲観的な発言をしていたほどだ。
「から揚げの天才」は、2018年11月に1号店を出店、小規模で出店しやすいFCモデルであったこと、コロナ禍に強いテイクアウト業態であったため、2021年の7月には100店舗を達成、年内に112店舗まで増加した。
しかしその後は出店スピードが落ち、閉店も目立つように。そして現在、公式サイトで確認できる店舗数は6店舗という状況だ。
唐揚げの敗因は「人件費込みの価格競争」
この激減について、また期待された唐揚げの凋落の一方、悲観的に見ていた居酒屋が好調であることについて、渡邉氏はどのように考えているのだろうか。
「コロナ禍では3日ごとに1店舗を閉めているという状況でした。緊急事態宣言が発出され、居酒屋の4割近くが閉店をしている中では悲観的な発言もしました。実際あのままの状態が続いていれば、居酒屋は無くなっていた可能性もあった。しかしその後コロナ禍が収束に向かい、居酒屋の閉店の流れにも歯止めがかかりました。結果として残った店舗は営業を継続し、現在に至っています。
唐揚げ事業については正直なところ、私たちにとっても想定外の部分がありました。あの時はスーパーも小売も、唐揚げブームでしたね。コロナ禍でマーケットが2倍になったと言われています。一方で参入する事業者は3〜4倍に急増し、非常にレッドオーシャンの厳しい市場になりました。当社の強みは調達力にあります。例えば、タイの大手ブロイラー会社から大量に仕入れることで食材原価を抑えていました。しかし、唐揚げ業態は家族経営の小規模店も多く、人件費の構造が私たちと異なります。つまり原価面で強みを発揮できても、人件費を含めた競争では優位性を築けなかったことが敗因だったと思います」

