背景に、ただチームを愛する純粋な思い

「旅の恥は掻き捨て」と、旅行先での傍若無人な振る舞いをあらわすことわざがある一方で、「立つ鳥跡を濁さず」と潔さを模範とする言い回しもある。それほど、日本に生きる人たちにとって旅先は、愛憎半ばする空間だった。よそ者ゆえの受け入れられない寂しさと、よそ者ゆえに尊ばねばならない慎みと、その両面が入り混じるのが、旅だった。

日本代表サポーターがゴミを拾うのは、そんな情緒ではない。ただ、サッカーを愛し、そのプレーに一喜一憂し、12人目のメンバーかのように没入するために、青いゴミ袋を広げ、観客席をチームカラー=青に染める。そのゴミ袋が、たまたまあったから、周りのゴミを回収した、それだけに過ぎないのではないか。

「海外」の「称賛報道」にせよ、「称賛報道」をめぐる「国内」の反応にせよ、どちらもワールドカップの中身=サッカーの試合には、まったく関係がない。無関係だからこそ、各々が好き勝手な考察を積み重ね続けてきたし、これからもそうだろう。

サッカー「報道」を好むワケ

漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)にオリンピックのたびに姿を見せた名物キャラクター・日暮熟睡男ひぐらしねるおのように、「日本人のゴミ拾い」は、これからも4年ごとに「称賛報道」の的となり、そして、その理由をめぐる考察も繰り返されるに違いない。

サッカーそのものには関心がなくても、いや、ないからこそ、ワールドカップをめぐって盛り上がったかのような気分に浸れるからである。世の中のムードに合わせて、一緒に興奮しているかのように勘違いできるからである。

ゴールに入ったサッカーボール
写真=iStock.com/Rost-9D
※写真はイメージです

そんなサッカー自体よりも「サッカー報道」を好む風土は、30年前にゴミ拾いが始まったときよりは、はるかに薄まっている。オランダ戦についても、ただ「引き分けがすごい」ばかりではなく、鎌田大地選手が目立たないながらも、いかにゲームを支配していたのか、といった報道が多かった。

このように、メディアやファンの関心が、サイドの話題(ゴミ拾い)や勝敗ばかりではなく、試合内容そのものに、もっと向かえばこの風土が完全に消えるだろう。そして、私たちが欧米からの視線などを気にせずに純粋に熱狂できたときにこそ、森保一監督の言う「新しい景色」=代表チームの上位進出、そして、過剰な自意識から解放された、成熟した日本社会の姿が見えてくるのではないか。

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