2種類の「ゆで太郎」が存在する
ここまで紹介してきた郊外出店、もつ次郎の併設などの戦略は、池田氏が率いる「ゆで太郎システム」の戦略だ。実は同じ「ゆで太郎」の看板を掲げながら、まったく別の会社が運営する店舗が存在する。ゆで太郎を創業した「信越食品」だ。
信越食品は東京都大田区の大森を拠点に、都内で約25店舗を直営している。こちらは駅前中心の立ち食いスタイルで、天ぷらは揚げ置き、もつ次郎の併設もない。両社に資本関係はなく、フランチャイズ契約で結ばれているだけだ。
「メニューも違うんですよ。たまにお客様から苦情が来る。『あの店にあったメニューがない』と。いや、違うんですよ、って」
外観から見分ける方法はあるのか。池田氏によれば、看板に「江戸切りそば」の文字があるのはシステム側で、最もわかりやすいのは「もつ次郎」の看板だという。もつ次郎が併設されていれば、それはゆで太郎システムの店舗だ。
また、ゆで太郎の公式HPにある「お店一覧」を見れば、信越食品系の店舗には「信越食品」との表示がある。
「働くお父さん」を喜ばせたい
ゆで太郎の客層は幅広い。朝は出勤前のサラリーマン、昼はロードサイドを走るドライバーやブルーカラー、夕方には仕事帰りの会社員。さらには老夫婦が朝の10時半ごろにふらりとやってくることもある。朝・昼・晩、すべての時間帯に強みがあるのだ。そのなかでも特に池田氏は「働くお父さん」に喜んでもらいたいと語った。
「私自身がそうだったんです。サラリーマン時代に車であちこちを回っていました。ロードサイドでご飯を食べられる場所を探すのですが、その頃は毎日ラーメンか牛丼ばかりを食べてました。別にラーメンと牛丼が好きだったわけじゃなくて、郊外にはそば屋も含めて他にお店がなかったんです」
この実体験が、ゆで太郎のすべての原点になっている。美味しいものを、車で移動する人でも立ち寄れる場所で、腹いっぱい食べてもらいたい。だからロードサイドに出店し、座って食べられる店を作り、朝食セットからもつ煮定食まで幅広く揃えた。
「軽く食べたい人には朝のかけそば、がっつり食べたい人にはセットやもつ煮定食。どんな人でも好きなものを選べるようになっているのが、うちのミソだと思います」
駅前の一等地で競合他社とは争わず、郊外出店した際のデッドスペースすら収益源に変える。そして、「働くお父さん」を喜ばせるという一点を、絶対に外さない。飲食チェーンの常識から外れた実直戦略が、ゆで太郎を業界トップに押し上げたのだ。


