勝機を見いだした「郊外展開」

ゆで太郎システムは、創業時の直営1号店こそ品川区の西五反田だったが、2007年には千葉県に初の郊外型店舗となる五井白金通り店を開店した。この店の成功が、その後の拡大路線を決定づけた。

「立ち食いそばの立地は、基本的に駅前かオフィス街しかないんです。だから、郊外にあった個人経営のそば屋が減っていくと、郊外でそばが食べられなくなるんです。でも、そば屋の市場がなくなったわけじゃない。そこで、郊外でも気軽に入れるそば屋を作ろうと思ったんです」

そう語るのは、ゆで太郎システムの池田智昭社長である。ただし、郊外ならではの課題もあった。「ゆで太郎」という名前だけでは、何の店かわからないのだ。車で通りすがりに看板を見ても、なにを茹でる店なのかがわからない。そこで「江戸切りそば」という言葉を看板に加えた。江戸風のそば切りという意味の造語だが、そば店であることが一目でわかるようになった。

立ち食いそばチェーンが出店できるのは、駅前かオフィス街に限られる。一方で、郊外はまったく手が付けられていなかった。池田氏はそこに「ブルーオーシャン」を見たのだ。年間約20店舗のペースで出店を続けており、現在では23都道府県にまで展開を広げている。

そば店なのに「もつ煮定食」がヒット

ゆで太郎の第二の柱として急成長しているのが、ゆで太郎に併設されたもつ煮専門店の「もつ次郎」だ。もともと池田氏が目指していたのは、ゆで太郎にはなかった「がっつり食べられる定食メニュー」を作ることだった。

「ちょい飲みの発想ではなくて、うちの店にはがっつり食べられる定食メニューがなかったので、それをつくろうと思ったんです。東京だともつ煮は酒のつまみですが、もつ煮定食は北関東の文化といっていいくらい普通のメニューです。それを前の会社にいるときに北関東をまわっていて知っていたので、『あれを流行らせよう』と思ったわけです」

こだわったのは、群馬の名店の流儀に忠実であることだ。もつ煮には野菜を入れず、豚モツとこんにゃくだけに絞った。

ゆで太郎西五反田本店にあるもつ次郎の看板
撮影=プレジデントオンライン編集部
ゆで太郎西五反田本店にあるもつ次郎の看板

「野菜を入れると原価は安くなるんですが、味がぶれるんです。群馬で名店と言われているところはどこも、野菜を入れていないので」

ゆで太郎 瑞穂店(東京都 西多摩郡)の看板。「江戸切りそば」と「もつ煮定食」が並んでいる。
写真提供=ゆで太郎システム
ゆで太郎 瑞穂店(東京都 西多摩郡)の看板。「江戸切りそば」と「もつ煮定食」が並んでいる。

2020年1月、東京・五反田に単独店舗として第1号を開店。しかし結果は芳しくなかった。直後に新型コロナに見舞われたこともあり、同年9月には閉店に追い込まれる。「毎日もつを食う人はいない」。それが池田氏の得た教訓だった。