デッドスペースを「もつ次郎」に変えた
ただ、商品そのものには自信があった。どうにか生かせないかと考えていたとき、思い出したのが郊外店舗の「デッドスペース」である。
「郊外でテナントを借りると、50坪とか60坪あるんです。でも、ゆで太郎に必要なのは35坪くらい。残りは壁で仕切って、物置にするしかなかった。コインランドリーやたこ焼き屋にすることも考えたのですが、採算が合わなくて」
こうした経緯もあり、もつ次郎はゆで太郎の郊外店舗のなかに併設する形で出店していく。
2020年3月にもつ次郎との併設第1号店である加須上種足店(埼玉県)がオープンし、その後も続々と併設店が生まれていく。特に、この第1号店と、2020年8月にオープンした神栖知手店(茨城県)は、コロナ禍にもかかわらず「爆発的な売り上げを記録した」と池田社長は語る。
もつ次郎は定番化していき、もつ煮にご飯と小鉢がつく定食セットが、昼にも夕方にも売れていく。ゆで太郎は新たな看板メニューを手に入れたのだ。現在、大半の店舗にもつ次郎が併設されている。
おにぎりは売れず、ミニ丼が当たった
ゆで太郎の急成長を支えているのは、郊外出店やもつ次郎だけではない。客のニーズに合わせて「選べる」メニュー構成も大きな武器だ。だが、この形にたどり着くまでには試行錯誤もあった。象徴的なのが、おにぎりの失敗である。
ほっかほっか亭出身の池田氏にとって、おにぎりは得意分野のはずだった。お客さんの要望もあり、専用の機械まで購入して出来たてのおにぎりを店頭に並べた。ところが、結果は惨憺たるものだった。
「全然売れない。社内にも『売れますよ』という意見があったんですけどね。1日数個売れるかどうか、というぐらい、本当にダメでした」
代わりに当たったのが、ミニ丼のセットメニューだった。かつ丼、かき揚げ丼、カレー――フルサイズのそばに小さな丼物がつくセットを増やしていくと、おにぎりはますます売れなくなり、販売を取りやめたという。
「うちの客層には、おにぎりじゃ物足りないんですね。おそばだけだと物足りないから、みんなご飯をつける。それも、おにぎりじゃなくてちゃんと『お料理』になってる丼ぶりものを選ぶ。働くお父さんたちは、ガッツリ食べたいんですよ」
セットメニューの注文比率はいまや約半数に上る。失敗から学び、客の本音に合わせてメニューを組み替えていく。その柔軟さも、ゆで太郎の強さの一つだ。


