欧米は政策金利を上昇させる可能性
利下げが取りざたされていた米国の政策金利ですが、本欄既報通り物価上昇や雇用情勢が比較的安定していることなどから、中央銀行のFRBは一転、金利を上げる可能性も出てきました。このことが、このところの日米の株価の下落やビットコインなどの下落を誘発しています。
いずれにしても、米欧で利上げが行われるとなると、円安がさらに加速する懸念があり、日銀は、インフレ阻止、円安阻止の観点から政策金利(短期金利)の利上げに踏み切らざるを得ません。現状0.75%の政策金利が、今月15日、16日の政策決定会合で0.25%利上げし、1.0%となりました。
ただし、これだけでは終わりません。0.25%の政策金利の利上げだけでは円安に十分には歯止めがかからず、インフレ抑制効果も十分でないので、政策金利は年内には1.25%となると私は予想しています。しかも、それより高い政策金利の「到達点」を予想する人も増えてきています。
さらには、日本ではガソリンなどの補助金のバラマキなどから、財政悪化懸念が大きく、高市政権発足時には1.6%台だった長期金利(新発10年国債利回り)が一時2.8%にまで上昇しました。
政策金利(短期金利)の上昇はインフレや円安阻止のためにはやむを得ない部分が大きいですが、長期金利まで上昇するとなると、企業や住宅ローンを抱える家計への負担はもちろん増大し、家計を圧迫するのです。
余談ですが、ガソリン価格をレギュラーで170円に抑えるための補助金はやめたほうがいいと私は考えています。今のやり方では、燃費の悪い高級車を乗り回す富裕層にも恩恵があります。さらに、ガソリン価格を人為的に下げれば、公共交通機関を利用することやEVへの転換などの工夫もなくなります。首相就任時に170円だったという何の根拠もない理由から、価格が決められているのも経済的には合理的な意味がないでしょう。
所得の低い層への補助金と、トラックやタクシー業者への個別の補助のほうがより望ましいのは明らかです。消費税下げも同じ理由で、所得に応じた補助金にすべきです。
所得の2極分化とエンゲル係数の上昇
そして、今後も物価の上昇は続くと考えられます。ロシアのウクライナ侵攻や中国の強硬姿勢、イラン情勢などを乗り越えたとしても世界の分断は続き、戦略物資である原油などのエネルギーやレアアースなどの資源価格、食料などの価格はそう簡単には下がりにくいと考えられます。また、地球温暖化,アフリカなどの人口増加や工業化の進展なども、食料需給やエネルギー価格に影響します。
これらのことを考えれば、物価は長期的にも上昇すると考えられます。日本では、所得の二極化も進んでおり、食費の値上がりも多くの家庭、とくに低所得層に影響を及ぼします。
それに関連して、2025年度のエンゲル係数は28.8%となりました(2024年度28.3%、総務省家計調査)。エンゲル係数は可処分所得に占める食費の割合ですが、今世紀に入り最高の数字となっています。昨年はコメも値上がりしましたが、食品価格が総じて上がっているからです。食料品価格上昇率で高いのは、しょうが(54.5%)、うるち米、コーヒー豆、チョコレート、無菌包装米飯、ほたて、たまねぎ……となっています。
そして、重要なのはこのエンゲル係数が、所得が低い層のほうがより高くなる、ということ。所得層を10分類した場合の最低層(年間収入280万円未満、平均221万円)では34.4%、最高所得層(年間収入1152万円以上、平均1554万円)では24.1%程度と推計されています。
都道府県庁所在市別のエンゲル係数(二人以上世帯)をみると、合計47市のうち27市で2000年以降の最高値を更新し、全国的に食料品価格の高騰がエンゲル係数を押し上げていることがわかっています。
最も低いのが長野市の26.0%だった一方、最も高かったのが大阪市で32.9%。大阪といえば、食い倒れの街。食い倒れとは、本来、飲食物に贅沢をして財産を使い果たすことや、おいしいものを食べ過ぎて動けなくなることを意味し、大阪の豊かな食文化を象徴する言葉ですが、このまま物価が上がり、係数も上がれば、家庭の食費・食文化にも影響が心配されます。ちなみに2位以降は、京都市、宮崎市、長崎市、那覇市となっています。
加えて心配なことは、前回記事でも指摘しましたが、とくに日本の都市部では住宅価格が高騰しており、金利上昇ともあいまって、ローン返済期間の長期化と総返済額の上昇が起こっています。将来的には住宅費用も家計を今以上に圧迫するのです。
いずれにしても、イランでの紛争の影響が今後も尾を引くなど日本の貿易環境次第では、インフレ率の上昇は避けられません。さらには長期的にもインフレは続き、給与が増えなければ家計には厳しい時期が続くと考えられます。高い給与を求めての転職が活発になるでしょう。きちんとしたプランあっての転職活動ならいいですが、やぶれかぶれ、一か八かの賭けのような行動だとすると勝算は低いでしょう。そうなると子供がいる家庭では、最悪、路頭に迷う恐れさえ出てきます。


