※本稿は、重永瞬『新しい日本地理 地図・統計・移動から読み解く』(講談社現代新書)の一部を再編集したものです。
「マクド」と呼ぶ近畿・四国の11府県
こんな会話を耳にしたことはないだろうか。
「今日のお昼、マック行かない?」
「マックって何やねん。マクドやろ」
「えー、マックでしょ。じゃあビッグマックのことビッグマクドって言うの?」
「ビッグマックはビッグマックやろ。商品名やねんから。ほなミスタードーナツのことミッスって呼ぶんか?」
「いやいや、ミスタードーナツはミスドだよ」
「なんでやねん」
関東人と関西人の、ささいなすれ違いである。関西出身である私も、知り合いとこのようなやり取りをすることがある。茶番ではあるが、こうした地域差は会話のネタとしては便利だ。
2016年に日本マクドナルドが社内で行った調査によると、「マクド」という略称が使われているのは、近畿7府県と四国4県だけだったという(図表1。四国4県と滋賀県・三重県は、「マック」も併用)。
関西だけかと思いきや、意外なことに四国でも「マクド」が使われるようだ。あるいは反対に、西日本全体で「マクド」が使われていると思っていた人もいるかもしれない。
「京阪式アクセント」地域と一致する
関西で「マクド」が使われる理由として、アクセントによる仮説を紹介しよう。関西の若者言葉では、省略語は2拍目にアクセントが来ることが多い(*1)。「ミスド」や「ファミマ」、「ユニバ」といった3拍の省略語は、関西では「低高低」のアクセントで発音される。
言語学者の橋本礼子は、「『マック』では、京阪式アクセントの『低高低』を当てはめようとすると2拍目が『ッ』となってしまい聞こえない拍となるので、関西地方ではあまり好まれなかったのかもしれませんね」と推測する(*2)。
橋本の言う「京阪式アクセント」とは、東京式と並ぶ日本語の主要なアクセント類型で、近畿や四国において使用される(図表2)。京阪式アクセントが理由なのだとすれば、関西だけでも西日本全体でもなく、「近畿と四国」で「マクド」が使われることも納得がいく。



