東西を分ける新潟県の断崖絶壁

日本海側では、富山県と新潟県の県境が東西境界となることが多い。県境から少し東にある新潟県糸魚川市の親不知おやしらずは、日本海に面する断崖絶壁である。NTT東日本/西日本の境界や電力周波数の境界は、一部混在地域があるものの、いずれも親不知付近が境界となっている。

また、日清食品のどん兵衛は東西で味が異なることが知られるが、その区分は富山―新潟県境から不破関・鈴鹿関にかけてのラインである。日本の東西境界は、西は三関、東は親不知から箱根関のどこかに収まる。これは多くの人に共有される見解だろう。

「答え:フォッサマグナ」は正しくない

東西境界は何に着目するかによってさまざまに引くことができるが、あえて一つの線で分けるとすれば、どこになるだろうか。ある程度地理に関心のある人ならば、「フォッサマグナが東西文化の境界である」と答えるかもしれない。しかし、この見方にはいくつかの誤解と疑問がある。順を追って説明しよう。

フォッサマグナとは、日本列島の中央部を縦断する巨大な地溝帯である。明治時代にお雇い外国人の地質学者ナウマンによって発見され、ラテン語の「大きな溝」(Fossa magna)を由来として命名された。

フォッサマグナはよく糸魚川-静岡構造線(糸静線)と混同されるが、フォッサマグナは面的に広がる領域であり、糸静線はあくまでその西縁にすぎない(図表4)。

フォッサマグナと糸魚川-静岡構造線
出所=『新しい日本地理

東縁については諸説あり、柏崎-千葉構造線や利根川構造線などの境界が指摘されている。フォッサマグナを東西境界とすると、「東」の中心であるはずの東京が中間地帯になってしまう。

では、糸静線が東西文化の境界なのかというと、これも厳密に言えば怪しい。東西の文化差の一例として、方言の違いを見てみよう。