「あいつとは話が通じない」と思った瞬間、実は自分も「話が通じない人」になっているのかもしれない。東大初の経営学博士が自身の実体験と共に語った「対立を組み替える4つの戦略」とは。

「家庭も人生も経営だ」対立を解消する思考とは

どうして、この人とはこんなに話が噛み合わないのだろう――そう感じて、ため息をついた経験は誰にでもあるでしょう。しかし、話の通じない人と対峙しているとき、自分もまた話の通じない人になっているかもしれません。

何度説明しても伝わらない。正論をぶつけても響かない。気づけば、消耗しているのはこちらばかり。私自身、キャリアの中でやっかいな相手と数えきれないほど向き合ってきました。それでも踏みとどまれたのは広義の「経営」という視点を持っていたから。経営は、対立を「どちらが正しいか」ではなく「共通の目的に向かってどう解消するか」という問いへ組み替えて思考します。この視点に立つと、目の前の相手を「手に負えないやっかいな人」ではなく「解くべき対立があるだけ」と受け止められるようになります。

そもそも経営とは、企業だけのものではありません。家庭にも、学校にも、地域にも、そして一人一人の人生にも、経営は存在します。かの松下幸之助も「家庭も人生も経営だ」と語っています。幸せを求めない人間はいませんし、生まれてから死ぬまで誰とも関わらずに生きていける人間もいません。その意味で、私たちは皆、自分の人生を経営する当事者なのです。

(構成=渡辺一朗)