規制によって急成長した「中国AI産業」

半導体規制は中国AIを遅らせる一方で、中国AIの自立を促す副作用が出始めている。

その逆説を示す象徴が、DeepSeekと華為技術(Huawei)である。2026年4月24日のロイター記事によれば、中国のDeepSeekは、Huaweiのチップ技術に適応した新たなAIモデル「V4」のプレビュー版を発表した。

同記事は、DeepSeekが過去にNvidia製チップに依存していたことと対照的に、Huaweiとの連携が中国AI産業の自立を示す動きだと報じている。

ただし、過大評価してはいけない。同じロイター記事は、DeepSeek V4が長いテキスト処理に強みを持つ一方、画像や動画など複数種類の入力・出力には対応しない制約にも触れている。万能AIの完成ではない。それでも重要なのは、米国製GPUを前提にしないモデル開発と、中国製チップへの最適化が同時に進み始めた点である。

さらに4月29日のロイター記事は、DeepSeek V4の発表後、HuaweiのAscend 950 AIチップへの需要が急増し、字節跳動(ByteDance)、騰訊(Tencent)、阿里巴巴(Alibaba)などが新規注文を巡ってHuaweiに接触したと伝えた

単なる新製品発表ではない。中国製チップ、中国製AIモデル、中国クラウドの利用者が、一つの産業圏へ集まり始めている。

DeepSeek、Ernie Bot、ChatGPT。各種AIアプリ
写真=iStock.com/Robert Way
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経済制裁は「国産化の支援」にもなる

経済制裁や技術規制は、短期的には相手の開発速度を落とす。先端GPUが入りにくくなれば、訓練コストは上がり、研究の試行回数も減る。これは事実である。だが長期的には、別の力学が働く。輸入が難しくなれば、政府は国産化に補助金を注ぎ、企業は代替技術に投資し、研究者は手元のチップで最大性能を出す方法を磨く。

米商務省は2025年3月にも、中国の高性能計算、先端AI、スーパーコンピューター、高性能AIチップ関連の能力取得を制限するため、国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして指定した企業や団体のリストである「エンティティーリスト」への追加を発表した。米国にとって規制は必要な安全保障手段である。だが、中国側から見れば、米国依存から離れる政治的・産業的な理由がさらに強まる。

国家安全保障で問われるのは「世界最高性能か」だけではない。国内で調達でき、政府、軍、国有企業、民間プラットフォームに組み込めるAIなら、米国製の最先端モデルに届かなくても十分危険になりうる。規制されているのだから中国AIは遅れているはずだ、という安心こそ危うい。