米中で激化する“AI開発戦争”

米国を中心とした各国でAI開発が進むなかで、中国は民間企業だけでなく、国家の総力を挙げてAI開発に取り組んできた経緯がある。

中国の国務院は2017年7月、「次世代人工知能発展計画」(新一代人工智能発展規画)を発布し、2030年までに「世界の主要なAIイノベーションセンター」として理論・技術・応用のすべてで世界トップに立つという国家戦略を打ち出した。

2022年10月の第20回中国共産党大会で採択された報告書には、人工知能(AI)を含む戦略的新興産業を育成し、デジタル経済を加速させる方針に加え、「情報化・智能化された戦争」の特徴や無人・智能化作戦能力の発展への言及がある。これに象徴されるように、AIは民生のみならず軍事力の中核に据えられ、「軍民融合」路線の柱となっている。

これに対し米国は、中国への関税と輸出管理、投資規制を重ね合わせた包囲網で応じてきた。

第1次トランプ政権が2018年に通商法301条に基づき中国産品に追加関税を発動したのを皮切りに、2019年5月には商務省産業安全保障局(BIS)が華為技術(ファーウェイ)を「エンティティ・リスト」に掲載した。

さらにバイデン大統領は2023年8月、半導体・量子情報技術・AIの3分野で米国から中国への対外投資を制限する大統領令にも署名している。AIをめぐる覇権争いは、純粋な技術競争ではなく、経済制裁の応酬を伴う国家間競争として展開されてきたのである。

マイクロチップ上の中華民国と米国の旗
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経済制裁の“意外な副作用”

なかでも米国が最も力を込めて締め上げてきたのが、AIの土台となる先端半導体である。

大規模言語モデル(LLM)や軍事用の自律システムを動かすには膨大な計算能力が必要であり、その心臓部が画像処理半導体(GPU)などの先端チップだからだ。中国のAIを止めるには、その「燃料」であるチップへのアクセスを止めるのが最も効くという理屈である。

米商務省産業安全保障局(BIS)は2022年10月、中国による高度な計算チップ、スーパーコンピューター、先端半導体製造能力の取得を制限する規制を導入している

2023年10月にも、人工知能(AI)の軍事利用に必要な高性能チップや製造装置へのアクセスをさらに制限する措置を公表している。狙いは、中国の軍事近代化、監視能力、スーパーコンピューター利用を抑えることだった。

高性能GPUを絞れば、最先端モデルの訓練は難しくなる。この発想は合理的である。だが、相手が諦めるとは限らない。輸入できないなら国産でやるという号令が、技術者、企業、地方政府、投資家を一つの方向に動かすことがある。