AI「クロード・ミュトス」の脅威
このAIとは、4月7日、アメリカのAIベンチャーであるアンソロピック社が開発していることを発表した「クロード・ミュトス(Claude Mythos)」だ。電力や通信といった様々な重要インフラに対するサイバー攻撃を防ぐ目的で開発されたAIで、対象となるシステムが抱えるバグや弱点をいち早く発見する。
いち早くバグを発見し、それを塞ぐために使えば、これはポジティブな技術となる。しかし逆に、システムの脆弱性やバグを先回りして見つけ出し、そこにサイバー攻撃を仕掛ける目的で悪用することもできてしまう。だからこそ、先述したように安全保障上の鍵を握るAIだと言えるわけだ。
取材した専門家の中には、1月3日、アメリカ軍が電撃的にベネズエラへ侵攻し、マドゥロ大統領夫妻を拘束した件や、2月28日にイランの宗教指導者、ハメネイ師が爆殺された件に使われたという見方を示す人もいる。マドゥロ大統領夫妻が拘束された時にベネズエラの防空システムは完全にダウンしており、システムが骨抜きにされた状態でこの作戦が決行されたことは明らかになっている。
そこにクロード・ミュトスが使われていたかどうかは定かではないが、少なくとも同等のシステムが使われた可能性がある。ベネズエラにおいてもイランにおいても、中国製の防空システムが使用されていた。それがいとも簡単に突破され、さらには両国の公共インフラや重要インフラへのサイバー攻撃まで許してしまったのである。
いつ何時、中国も同じような状況に陥るかもしれないというリスクが、白日の下に晒されてしまったのだ。そうした点を考慮すると、今回の一件は中国に対して非常に大きなブラフ(脅し)になったと考えられる。
民間企業も対応を迫られる
このAIの動向に関して、あるアメリカ政府関係者は私にこう語った。
「これから世界は、このAIの分野において二大陣営に分かれるだろう。一つは中国、そしてもう一つはもちろんアメリカである」と。
アメリカにおいて、「クロード・ミュトス」に代表される人工知能は、中国をはるかに凌駕するレベルに達している。
今後世界は、システム的に優位に立つアメリカ陣営の人工知能を選ぶのか、それとも中国陣営のものを選ぶのかという二者択一を迫られることになる。このアメリカ陣営の基軸となるのが、アメリカ、イギリス、そして日本である。
この流れは民間企業も無視できるものではない。第一次トランプ政権の時代から、中核を担う日本の主要企業はすでにその方向へシフトしている。
ただ一つ懸念されるのは、ある国内通信大手企業がDeepSeekに代表される中国製の人工知能(AI)を使用している点である。あえて具体名は挙げないが、2030年の6G時代を迎えるにあたり、こうした方針についていけない企業も日本国内に出てくるのではないだろうか。あと4年の間にどう対応していくかが問われている。


