メディアの前で行われた政治パフォーマンス

これはいわゆる「デジタルロックダウン」であり、アメリカのサイバーセキュリティの観点からすれば、ごく当然の対応と言える

支給品の中に極小の追跡チップや盗聴装置が混入しているのではないか、あるいは不正プログラム(マルウェア)が仕込まれているのではないか、と警戒したためである。それらがエアフォースワンに持ち込まれることで、既存の機器が感染したり、何らかのサイバー攻撃に遭ったりするリスクを遮断するために、このような措置が取られたのである。

ただ、驚くべきは、この措置が公然と行われたことである。そもそも、そうした物品をすべて廃棄してくるのは敵対国や非友好国に対しては通常の対応であるが、重要なのはそれが公の場で行われたという点である。通常であれば、裏で事前に集めて廃棄処分にするところを、広くマスコミに報道されることを前提として実行されたのである。

しかも、アメリカ側のやり方は徹底しており、ホテルのWi-Fi接続や、公共の場所でのUSBポートからの充電も一切禁止された。事前に安全性のチェックを受けた電源からしか充電できないという徹底ぶりであり、Wi-Fiへのアクセスも禁じられるなど、完全に通信が遮断された状況であった。

これは一体どういう意味を持つのか。この件が気になったため、徹底的に取材を行ったところ、意外な事実が分かってきた。

6G時代を見据えた動き

2030年代に入ると、いよいよ通信規格が5Gから6Gへとシフトしていく。これにより何が起こるかというと、通信速度が現在の5Gの時代よりも10倍以上にスピードアップされる。そして、一度に送れるデータ量も飛躍的に増える。

4G、5Gから6Gへ移行するイメージ
写真=iStock.com/tanit boonruen
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これにより、いよいよ本格的なIoT(Internet of Things)の時代を迎える。この6G時代を見据え、第1次トランプ政権の頃からサイバーセキュリティのあり方について協議が行われ、同盟国間でも水面下で密かにすり合わせが進められてきた。

その結果として、アメリカが導き出した結論は次のようなものである。6G時代に突入すると、サイバー攻撃などのリスクが格段に高まる。それに対処すべく、中国を強く意識した形で、サイバー攻撃にどう対応していくかという基本方針が、すでに決定しているのである。

それは一体どういうことか。今後6Gの時代に突入すると、サイバー空間(デジタル空間)は2つの陣営に分かれることになる。最先端の技術を備えたグローバルなアメリカを中心とするネットワーク陣営と、技術的に遅れた中国を中心とするローカルなネットワーク陣営の2つに、世界は二分されていくだろう。アメリカは現在、そのような方向へ事態を進めようとしている。

ここで注目すべきは、これら両陣営に「互換性を持たせない」という点である。相互の互換性をなくす状況へ持っていくことがアメリカの基本方針であり、最終的な目標とすることはすでに決定している。