世界のサイバー空間は二分される
つまり、デジタルにおいて両陣営は完全に分断される。そのことをまざまざと見せつけたのが今回の出来事であった。
繰り返すが、2030年を迎えるとサイバー空間は分離し、世界各国はアメリカ陣営と中国陣営のどちらにつくのか「踏み絵」を踏まされるというのがアメリカの認識である。両陣営に同時に属することはできず、必ずどちらか一方を選ばなければならない。
そうしなければ、デジタル空間におけるサイバー上の安全は構築できないのである。インターネットは開発当初、グローバルで世界統一の通信規格になることが想定されていた。ところが、悪意のあるサイバー攻撃によって状況は一変した。さらに、AIが軍事利用されることが明らかな今、安全保障の観点から「両陣営が一体化している状態は非常に大きなリスクを招く」と判断された。そのため、両者を分離させ、相互に互換性を持たせないというのがアメリカの戦略となったのである。
こうした背景を踏まえれば、最先端の半導体を中国に提供しないという結論に至るのも当然である。そして、一般のユーザーではなく、世界各国の関係者や専門家に対してこの方針を強く認識させるために、今回の米中首脳会談が利用されたのだ。これは世界各国への大きなメッセージとして伝わっている。
日米の「サイバーセキュリティ同盟」
日本がアメリカ陣営に加わることはすでに明らかだ。
実は第一次トランプ政権時代、日本はサイバーセキュリティの分野において、アメリカ側と相当緊密なすり合わせを行ってきた。6GやAIが非常に大きな影響力を持つであろう2030年を見据え、日米間でこの分野における強固な連携を目指し、すでに「サイバーセキュリティ同盟」が結ばれていたのである。
米中首脳会談が始まる2日前の5月12日、片山さつき大臣はスコット・ベッセント財務長官と会談を行った。この会談で、今後の安全保障の鍵を握るAIについて、三菱UFJや三井住友など、日本の三大メガバンクに提供する方針が決定した。このAIはGoogleやアップルといったアメリカのIT大手など約50の会社や組織と、イギリス政府にしか提供されてこなかった。ここに日本が加えられた。厳密には、アメリカ側からそうした提供の申し入れが行われたのである。

