第2の罠
南シナ海の封鎖で日本経済の崩壊
台湾がイデオロギー的・地政学的なレッドラインであるとすれば、南シナ海は極めて実利的な戦術的劇場である。南シナ海に面する国は、台湾、中国、フィリピン、ベトナム、マレーシアなど数多い。ご存じのように中国はこのエリアでも他国に圧力を強めている。こうした状況下で、取引重視のトランプ政権が「南シナ海の岩礁など米国の国益に関係ない」として、この国際水域の自由航行の維持に無関心な姿勢を示した場合、中国は全面戦争を引き起こすことなく、得意の「閾値以下(サブ・スレッショルド)」の作戦、すなわちグレーゾーン戦術で日本の首を真綿で絞めるように締め上げるだろう。
想定される具体的なシナリオはこうだ。
中国は南シナ海の主要な航路において、偽装された原油流出事故や海難事故をでっち上げる。そして「海洋環境の保護」や「海難救助活動」を口実に、広大な海域に一時的な立ち入り禁止区域(事実上の封鎖海域)を一方的に宣言する。
あるいは、中国海警局が国内法である「海警法」を拡大解釈し、「密輸」や「環境破壊」の容疑で、中東から日本へ向かう日本の商業船舶やタンカーを不当に拿捕・臨検する。さらには、マラッカ海峡から南シナ海へ抜ける戦略的なチョークポイントに、所属不明の機雷を密かに敷設し、航行の安全を根底から脅かす。
南シナ海は日本の生命線
南シナ海のリスクが高まれば、ロイズなどの国際保険市場における海上保険料は一夜にして天文学的に高騰する。日本へ向かうタンカーは、フィリピン東方沖やオーストラリア近海を迂回するルートへの変更を余儀なくされ、輸送コストと日数は劇的に跳ね上がる。
エネルギー(原油やLNG=液化天然ガスなど)や、自動車・電子機器産業用部品の輸送ルートが寸断されれば、日本の全家庭の光熱費や物価はたちまち高騰する。さらに、小麦、大豆、トウモロコシといった穀物輸入の遅延や国内漁業の制限が重なることで、パンや肉類、魚などの日常的な食料も深刻な品不足に陥る。
結果として、この海上物流の危機は、極端な物価高と食料・エネルギー不足を引き起こし、国民の生活と家計に甚大なダメージを与えるのだ。
つまり、日本人の「当たり前」の生活ができなくなってしまう恐れがあるのだ。

