「みどりの窓口」の大量閉鎖や京葉線の通勤快速廃止など、JR東日本のサービス低下がたびたび話題になる。経済ジャーナリストの櫛田泉さんは「JR東日本は、上場している鉄道・航空各社の中で外国人株主比率が最も高い。株主利益を追求するため、営業利益率が劣る鉄道事業に対して、経営のインセンティブが働きにくい構造が生まれている」という――。

JR東が「初」の廃線、その理由は

JR東日本は2026年3月、千葉県内を走る久留里線の久留里―上総亀山間9.6kmの廃止届を国土交通大臣に提出した。これにより同区間は2027年3月31日の営業をもって廃止となる見込みだ。地震などで被災した路線を除くと、JR東日本の管内では初めての廃線となる。

上総清川駅を発車したキハE130系
上総清川駅を発車したキハE130系(写真=銚電神/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

久留里線の同区間は、2022年度の実績で年間2億4000万円程度の赤字が出ているという。JR東日本は、鉄道廃止後の代替交通について、君津市が運行する今後18年分の自動車交通の経費、20億円を拠出するとしている。しかし、この20億円という金額については、地域にとって適正な金額と言えるのだろうか。

同社の2026年3月期決算では、売上高3兆846億円に対して、経常利益は3516億円と増収増益を達成。久留里線の廃線処理費用については、こうした会社の規模感と比較するときわめて少額であり、この金額を現在の価値に換算するとさらに廃線処理の費用は少額となる。

2027年3月31日には、青森県の津軽線蟹田―三厩間28.8kmの廃止が決まっているほか、山形県と新潟県を結ぶ米坂線や群馬県の吾妻線でも協議が進んでいることから、今後、きわめて少ない費用で、地方路線の廃止が加速することが懸念される。

※JR東日本「2026年3月期決算および2027年3月期経営戦略説明資料

地元自治体に支払う20億円の価値

ファイナンス用語に割引現在価値という言葉がある。これは将来的に受け取れる金額を現時点でどの程度の価値があるのかに換算したもので、1年後に受け取れる10万円は現在の価値に換算すると10万円よりも少ない金額となる。

これはどういうことかというと、例えば、1年後に10万円を受け取るために、ある金額を1%の国債で運用する場合に必要となる金額は9万9010円ということになり、この金額が割引現在価値となるのである。

JR東日本は、久留里線の廃線に当たって今後18年分の自動車交通の経費20億円を拠出するというが、この価値を割引現在価値に換算するといったいどの程度の金額になるのであろうか。