修繕費の「節約」でトラブル続出
JR東日本ではコロナ禍以降、鉄道事業に対する修繕費を800億円切り詰めたことで、首都圏での架線切断や出火トラブルが相次ぎ、2026年2月には喜瀬陽一社長が謝罪コメントを発表する事態となった。走行中の新幹線が分離するトラブルが発生したことも記憶に新しい。
こうした一連のトラブルについては、修繕費を増額するなどの対応を取るというが、久留里線に代表される、会社の規模と比較して極めて少ない廃線費用でのローカル線廃止の流れが今後、加速することが懸念される。
こうした状況に対して、福井県のえちぜん鉄道の元専務取締役の伊東尋志氏は、次のように警鐘を鳴らす。伊東氏は米国ニュージャージー州立ラトガース大学経営学大学院でファイナンスを専攻している。
経営が株価に左右され、歪みが生まれる
「JRは、鉄道の運行が最も基本的な企業目的として認知されているにも関わらず、株価という流通・不動産事業のKPIに基づいて経営されていることが歪みの本質です。阪急阪神ホールディングス、東急などの私鉄会社が、持ち株会社を上場し、鉄道については非上場の子会社とすることで、市場の評価にはなじまない事業をある程度分離していることとは対照的です。
JRのような広域の鉄道ネットワークを持つ企業が配当性向を業界平均以上に高めることは、将来的な災害などへの備えや、必要な修繕を行うための資金を流出させることにつながりかねず、結果的に、そのリスクを地方自治体などに押し付けることになりかねません。
協議会などでJRと対峙することになる自治体や、鉄道政策を立案する国土交通省も、JRの財務内容と株主の立場を考慮したうえで、JRに対して必要な情報、例えば路線の収入、経費の計算方法の詳細の開示要求をすることや、自分たちの主張を行うことが本来の議論ということを理解しなければ、例えば、リスクに見合わない廃線処理費用で、地域の鉄道を失うことにつながります。これは、市場が本来目的とする透明性や社会的余剰の最大化にも反します」
