3分の1の出費で年2.4億円の赤字を解消
企業活動に関連した割引現在価値を計算する場合には、その利率に加重平均資本コスト(WACC)と呼ばれる数値を使用することが一般的だ。同社では、株主・投資家情報(IR)サイトで、WACCの値はを3.5%程度と公表していることから、この数値を計算に用いることにした。
なお、割引現在価値については、以下の数式により求めることができる。
・ 「PV(現在価値)」
・ 「FV(将来価値)」
・ 「r(利率)」
・ 「n(年数)」
久留里線の廃線処理費用として、同社から君津市に対して拠出される20億円については、毎年1.11億円ずつ18年間にわたって拠出されるものと仮定して計算をしたところ、この現在価値は、約14億6500万円と算出された。1年あたりに換算すると7325万円となる。
JR東日本側から見ると、年間2億4000万円の赤字が解消されるにもかかわらず、君津市に対しては年間7000万円程度の手切れ金で鉄道の廃線をのませたことになる。
一方で、君津市側は、今後のバス運行コストの上振れや、ドライバー不足への対応、その他に発生する社会的費用についてのリスクを負うことになる。
赤字路線を抱えつつ稼がなくてはいけない
1987年4月の国鉄分割民営化によって旅客6社と貨物1社に分割されて誕生したJRグループは、もともとは国鉄から引き継いだ全路線を維持できるように制度設計された会社であった。
本州3社のJR東日本、JR東海、JR西日本は、大都市圏や新幹線を抱えることから、それらの利益を内部補助として地方路線を維持できるようにした。
一方で、発足時から慢性的な赤字体質になるとされたJR北海道、JR四国、JR九州の三島会社については、それぞれ適正な年間赤字額が定められ、その赤字額の穴埋めができるように当時の長期金利であった7.3%から逆算した6822億円が北海道、2082億円が四国、3877億円が九州に経営安定基金として交付された。
経営環境が恵まれていた本州3社の株式上場は早く、JR東日本がそのトップを切って1993年に、JR西日本は1996年、JR東海は1997年に株式を上場し、その後完全民営化を果たしている(JR九州も2016年に上場)。
これにより、上場4社は赤字路線の維持と、株主利益の追求という、相反する役割を背負わされることになり、制度的な矛盾を抱える会社となってしまった。

