今年はいわゆる“バカッター”が豊作だった。SNSに投稿すれば世界に情報が発信されるが、仲間に自慢しようというくらいの軽い気持ちで自らの犯罪行為や迷惑行為を投稿する若者が続出。とくに今年はコンビニ店員が冷蔵庫に入った写真を投稿したり、ピザ店のアルバイトがピザ生地で顔を覆った写真を投稿するなど、アルバイトの悪ふざけ投稿が相次いだ。なかには閉店を余儀なくされたケースもある。バカッターは企業にとって大きなリスク。どうすれば予防できるのだろうか。

リスクマネジメントの観点から、最近はソーシャルメディアの利用についてガイドラインを定める企業が増えてきた。ただし、ガイドラインはあくまでも指針にすぎず、それを守らなかったからといって直ちに処分するのは難しい。また、社員にアカウント開設を禁じるガイドラインはやりすぎだ。会社に黙ってアカウントを開設していたという理由で処分すれば、逆に会社のほうが訴えられかねない。

法的に重要なのは、ガイドラインより就業規則だ。浅見隆行弁護士は次のように解説する。

「一般的な就業規則には、会社の信用を毀損してはいけないという遵守事項があります。投稿内容が信用を著しく傷つけるものであれば信用毀損行為に該当するので、解雇も含めた処分が可能。たとえば食品を扱う店なのに不衛生な行為をしたり、ホテルで宿泊客の情報を漏らしたというケースは、会社の本質にかかわる部分なので、厳しい処分も可能でしょう」

就業規則に職務専念義務を明記しておけば、就業時間中に投稿していた従業員を処分できる。ただ、これは程度問題。1日中投稿しているなら処分しやすいが、移動中に投稿する程度なら、従業員から訴えられたときに処分が無効になるおそれもある。

問題は、バカッターの主役がアルバイトという点だ。アルバイトは雇用の流動性が高く、クビになっても次の職場を探しやすい。そのため懲戒処分が抑止力として働きにくい面がある。