以前、払いすぎの残業代割増率を見直すことにより、残業代を減らす方法を取り上げた(「社長が残業代コストを減らす方法」 http://president.jp/articles/-/10548)。今回は、残業時間自体を減らす方法を中心に考えてみよう。
まず考えられるのが、社員が遅刻した場合の扱いだ。たとえば始業9時、終業18時、休憩1時間で実働8時間の会社があるとしよう。この会社で社員が1時間遅刻して、その日の19時まで働いたときに、素直に残業手当を払っている社長はいないだろうか。
じつは同じ日に限り、遅刻した時間と残業時間は相殺できる。そのため定時を過ぎた18~19時の労働に対しては、残業手当を支払う必要はない。
遅刻時間と残業時間の相殺が可能なのは、法律で1日の労働時間は休憩時間を除いて8時間以内と定められているからだ(労働基準法第32条)。遅刻して始業が後ろにずれても、休憩をはさんで8時間までは法定労働時間内。定時を過ぎていても時間外労働にはあたらないので、残業手当を支給しなくていい。
残業代を払いすぎているケースはまだある。たとえば社員が半日の有給休暇を取り、その日に残業をしたケースだ。社労士の和田栄氏は、こう指摘する。
「有休を取った午前中の3時間を労働時間とみなして、定時を過ぎた労働時間に時間外の割増賃金(割増率25%)を支払っている会社をよく見かけます。しかし、有休は労働時間にカウントされないため、午後13時から8時間プラス休憩1時間で、22時までの仕事なら時間外労働にならず、割り増しを払う必要はありません」
ただ、遅刻の場合と違って定時以降の労働時間を半休3時間と相殺できないため、定時以降の労働については所定の賃金を支払う必要がある。半日の有休を取った日に定時の3時間後まで働いた場合、時間単価1000円の賃金なら3000円の支払いが必要になる。要は、これまで時間外労働の割増賃金(25%)を払っていた会社は、割り増しなしの所定の額(100%)で済むようになるわけだ。