やられたら、やり返す。倍返しだ――。ドラマ『半沢直樹』の主人公は、敵役から妨害されるたびにこう言って逆転勝利を収めてきた。ただ、あれはあくまでもドラマの話。現実世界の権利関係において、被害者が加害者に倍返しするのは容易ではない。

そもそも日本の民法では、自力救済(権利を侵害された人が実力で権利を回復すること)が原則的に認められていない。相手から何か被害を受けたとき、司法手続きを取らずにやり返してしまうと、それ自体が罪に問われる可能性がある。

では、法律に則った倍返しは可能なのか。アメリカやイギリスでは、被害額の何倍もの損害賠償請求が認められている。たとえば13歳の原告が自動車事故で重度の火傷を負った事案では、メーカーに1億2850万ドルの支払いが命じられた。そのうち通常の損害賠償額は350万ドル。つまり原告はメーカーに対して約36倍返しを果たしたわけだ。

一方、日本の場合はどうだろうか。長谷川裕雅弁護士は次のように説明する。

「日本の民法は米英と違って填補主義です。そのため何か被害を受けても、それによって生じた損失額までしか賠償が原則的に認められません。つまり等倍返しが基本です」

加害者から慰謝料をふんだくるという話もよく聞くが、たとえ慰謝料をもらえても倍返しには遠く及ばないという。

「慰謝料は精神的な損害に対する補填です。精神的な損害は目に見えないため、いくらでもふっかけられる気がしますが、実際は相場が決まっていて、非常に低額です。和解の交渉では賠償額を慰謝料で調整することもありますが、それでも1.1倍返し程度がいいところではないでしょうか」(同)