社員の遅刻や半日の有休取得は日常的ではなく、見直し効果は期待できないという社長には、実際残業している時間そのものを減らす方法をおすすめしたい。
上司に申請して許可されないと残業できない“残業許可制”を導入している企業があるが、運用には注意が必要だ。残業許可制は形骸化しやすく、上司が許可していないのに社員が勝手に残業するという状況に陥りやすい。そのときに社員から未払い残業代を請求されると厄介だ。会社としては「社員が勝手に残業した」と主張したいところだが、残業が常態化していれば会社が残業を黙認していたとみなされ、裁判でも会社側の主張が退けられるおそれがある。
それを踏まえて和田氏が提案するのは、始業前に限って残業を認める朝残業制だ。
「早朝出社を苦手とする社員は多く、自主的な残業は減るはず。残業したとしても、夜の残業と違って時間に制限があるので、だらだらと働くことはなくなり、無駄な残業は減るでしょう」
朝残業制は、すでに大企業でも採用されている。伊藤忠商事は今年10月から、22時以降翌朝5時までの深夜勤務を禁止して、朝5時から9時までの勤務に対して50%の割増賃金を支給する。朝型へのシフトを促すために割増率を高く設定しているが、朝にシフトすれば残業時間が短縮されることが予想される。残業代に悩む社長には参考になるはずだ。
(図版作成=ライヴ・アート)