「仕事をしていた」ではなぜ支払われないか
労働基準法は1日8時間、週につき40時間までと、企業が労働者を働かせることができる時間を規制しています。それを超えた勤務が時間外労働となり、残業代が支払われるわけですが、ただ単に「所定の勤務時間外に仕事をしていた」というだけでは、支払いの対象にはなりません。というのも、企業側(上司)が何も知らず、労働者が勝手に仕事をしていた時間までも労働時間であると評価し、給料を支払わせることは法律の趣旨に反するからです。
では、どんな条件があれば「仕事時間=労働時間」と評価されるかというと、一般的には上司の指揮命令下で仕事に取り組んでいる場合がそれに当たります。上司から指示を受けた仕事を遂行している、上司と打ち合わせをしている、上司が働いている横で仕事をしている。これらは、すべて指揮命令下にあるといえます。このように、直接の指揮命令下になくても、その仕事に対する明示の、あるいは黙示の指示があって仕事をする場合には労働時間と評価されます。たとえば、「今日は残業してこれを仕上げてくれ」と言い残し、上司自身は帰ってしまうケースが前者であり、「残業してくれ」という言葉は使わなくても、終業間際に、大量の仕事を与え、「明日までに終わらせてくれ」というようなケース(=残業しなければ終わらないのが明らか)が後者です。
これが理解できれば、上記の質問に対する答えは簡単です。