サービス残業を渋々受け入れてきたが、会社に見切りをつけて、いよいよ退職を決意。未払いだった残業代をどうやって請求すればいいのか。

サービス残業代の請求は、時間外労働の証拠がどれだけ揃っているかにかかっている。労働基準法第109条では、労働者名簿や賃金台帳(時間外労働の時間数も記載事項の一つ)といった雇用状況に関する重要な書類を3年間保存する義務を会社に課している。また労働時間については、厚生労働省が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」を策定。タイムカードなどの労働時間の記録に関する書類も3年間保存することを求めている。

しかし、タイムカードを先に押してから残業させる悪質な会社もあり、会社側が持つ記録が勤務実態を必ずしも正確に示しているとはいえない。裁判に発展した場合、時間外労働の立証責任が原則として労働者側にあることを踏まえれば、できるかぎり証拠を揃えておく必要がある。労務問題に詳しい横張清威弁護士は次のように解説する。

「労働裁判では、営業日報や直筆メモも有力な証拠として認められる場合があります。メールの送受信記録も有効。毎日帰宅前に会社PCから自宅PCにメールを送り、タイムカードがわりに退社時刻を記録していた人もいました」

ただし、証拠集めには細心の注意が必要。例えば営業日報を社外に持ち出してコピーを取ると「情報漏洩だ」、自宅にメールを送ると「私的利用だ」と因縁をつけられ、懲戒処分をチラつかせてくる可能性もある。証拠集めは水面下で行いたい。

「会社側から不当なプレッシャーをかけられても、慌てる必要はありません。営業日報のコピーや自宅へのメール送信が懲戒事由として認められる可能性は低い。むしろ経営者は、大きなトラブルに発展することを恐れています。他の社員に知られて飛び火すれば、一人分の残業代では済まなくなる。徹底的に争う姿勢を示したほうが交渉を有利に運べます」(横張弁護士)

一般的に未払い賃金の請求は口頭→メール・通知書→内容証明→労働基準監督署→労働審判・訴訟という順で解決を図ることになる。労基署がひとたび動くと、会社側のダメージは甚大だ。2010年9月、イオングループのマックスバリュ東北は、約1000人の従業員に対して約2億2000万円の未払い残業代を支払うと発表。これも労基署から是正勧告を受けた結果だった。