昨年11月、東京・銀座のクラブに勤務していた女性3人が店を相手取り、未払い賃金の支払いを求めて東京地裁に労働審判を申し立てた。元ホステスの女性の日給は4万6000円。しかし遅刻・早退、ノルマ未達成による罰金を天引きされ、無給の月が続いていた。
罰金額は店によって異なるが、遅刻15分につき日給の10%、週1~2回の同伴ノルマ未達成で日給100%が相場。その他、欠勤やイベント動員ノルマ未達成についても罰金を科すのが、“銀座ルール”だという。
キャバクラ業界の罰金の高さは特別かもしれないが、他の業種でも罰金制度を設けている会社が少なくない。社員から罰金を徴収する行為に問題はないのだろうか。労務問題に詳しい横張清威弁護士は「罰金制度の多くは違法」と指摘する。
「労働基準法第16条で、使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはいけないと決められています。労働基準法は一定の限度で減給という制裁を認めていますが、多くの罰金制度はこの限度を超えているのが実情です。また就業規則に何も決まりがないのに、勝手に給料を減らすこともできません。そのため、大部分の罰金の徴収は無効です」
遅刻や欠勤の場合、罰金制度とは別の枠組みで給料を減らされる可能性はある。賃金には「ノーワーク・ノーペイ」、つまり働かなければ賃金の支払いも発生しないという原則があるからだ。ただ、差し引けるのは働かなかった時間に相当する賃金だけ。1日の無断欠勤に対して2日分の給料減額は違法となる。
懲戒処分の「減給」に処されるケースもあるが、これにも厳しい制限がある。労基法第91条では、「減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と規定。それを超える減給処分は無効だ。