仮に1カ月の平均賃金20万円、1日分1万円のサラリーマンが、度重なる遅刻で減給処分を受けることになったとしよう。1回の遅刻について減給できるのは、1日分の半額までで最高5000円。また遅刻を何度重ねても、減給総額は月給の10%の月2万円までだ。仮に10日間遅刻しても、1日5000円×10日間で5万円の減給という計算にはならない。
不祥事に対して「減給20%3カ月の処分」というニュースを耳にすることもあるが、これは公務員や雇用関係のない取締役に限った話(国家公務員の減給処分は、1年以下の期間、月額の5分の1まで)。民間企業に勤めるサラリーマンに対してひと月の給料10%を超えた減給に処したり、一つの事案に対して何カ月にもわたって処分を続けるのは労基法違反である。
横張弁護士は、「ペナルティとしての減給処分はあまり現実的ではない」と指摘する。
「減給は懲戒処分の一つであり、原則的には口頭注意、始末書(けん責)といった段階を踏み、それでも改善がなかった場合に処すべきものです。企業にとっては、こうした面倒な段取りが必要なわりに、減給幅に厳しい制限があることが悩み。キャバクラなどで月給40万円で働いている人なら、減給の上限はひと月4万円で、制裁の効果がほとんど期待できません」
だからこそ違法な罰金制度が横行しているといえるが、ほかに方法がないのだろうか。
「基本給から罰金を引くのではなく、元の基本給を抑えて、無遅刻や皆勤などの条件を満たしたら手当を付ける給与体系にすればいい。どちらも結果的に同じ支払額なのに、前者は違法、後者は合法ですから。基本給が下がって求人しづらくなるというデメリットもありますが、違法な罰金制度を放置するよりずっといいはずです」