雇用維持のために自社農場も設立
さらに近年、國﨑青果は農家のサポートだけでなく、自社で直接農業を行う「生産法人」の設立に力を入れている。現在、熊本の「BASE」や長崎の「グリーンファーム絆」に加え、北海道でも農家と共同で大規模な自社農場を運営しており、その規模は自社関連だけで約150ヘクタールにも達するという。
流通業者がなぜ「作る側」に回るのか。そこには、単なる利益追求を超えた切実な理由があった。
1つ目は「気候の壁と雇用の維持」である。「ブロッコリーは気温が5度以下になると成長がピタッと止まってしまうんです。すると、毎日収穫していたはずの作業が突然なくなってしまう。何百人もの従業員を抱えているのに、『今日は仕事がないから休んで』とは言えません。自社農場を持っていれば、ブロッコリーの収穫がない日でも、別の畑の準備や定植作業、あるいは別の作物の世話など、何かしらの仕事を与えることができ、安定した雇用を維持できるんです」
2つ目は「北海道へ行かない社員の受け皿」だ。夏場の北海道出張には「10万円の出張手当」がつくなど待遇が用意されているが、家庭の事情で長期間家を空けられない社員も少なくない。彼らに対して「出張に行けないなら仕事はない」と突き放すのではなく、自社農場で畑の管理などの仕事を任せることで、多様な働き方を担保しているのだ。
そして3つ目の最大の理由が「産地の防衛」である。「高齢化でどうしても農業を引退する方が地域に出てきます。そんな時、周りに受け手がいなければ、その畑は荒れ地になり、産地としての生産量がどんどん縮小してしまいます。だからこそ、『俺らが引退した後は、この畑を管理してくれ』と頼まれた時に対応できるよう自社で作る機能を持っている必要があるんです」
物流の「2024年問題」と資材高騰への打開策
しかし、順風満帆に見えるブロッコリービジネスにも、乗り越えなければならない強大な壁がある。それが「物流の2024年問題」と「生産・梱包資材の爆発的な高騰」だ。
トラックドライバーの不足や高齢化により、長距離輸送の難易度は年々上がっている。これに対し、國﨑青果は自社で大型トラックやトレーラーを保有し、自社便やフェリー、JR貨物を駆使して全国へ運んでいる。しかし、最大のネックとなるのが強みであった「発泡スチロール」だ。
「発泡スチロールはかさばるため、大型10トントラックを使っても900ケースほどしか積めません。さらに、昨今の世界情勢を受けて発泡スチロール自体の価格が急騰しています。また、納品先のスーパーでも、かさばる空き箱のゴミ処理問題が限界に達しています」
そこで同社は現在、実証実験を始めている。ダンボールの中に、お菓子の乾燥剤のような「呼吸を抑える特殊な鮮度保持剤」を入れ、発泡スチロールと同等の鮮度を保ったまま輸送する実験を行う。これが成功すれば、トラック1台で1000〜1200ケースまで積載量を一気に増やすことができる計算だ。ゴミ問題も解決でき、資材高騰の波と運送費の上昇を吸収する強力な武器になるはずと、期待を込める。


