12時間以上行方不明になった夫

2024年秋。86歳の夫はスマホを忘れて出かけることが増え、やがてスマホが鳴っても出られなくなる。それでも、一人で歩行器を押して、近隣の歯科への通院はできていた。

10月になると、通院の予約が入っているのをすっぽかすようになり、スケジュール管理を任せられなくなる。

トイレに間に合わず、下着だけでなく、場合によってはズボンを濡らすことが増えた。

「『トイレが空いていなかったからいけないんだ! 前のやつが出てこなかったんだ!』とユニバーサルトイレの少なさや他人に文句をつけていました。洗濯物が山になり、説得してリハビリパンツを導入したのは12月のことでした」

まだこの時点で精神科医は「一人での電車移動は可能」と判断していたが、夫が老年科の通院で午前中に出かけた後、家がわからなくなり、日付が変わった午前2時近くまで帰ってこなかったのだ(前編参照)。

霧の中、杖をついて歩いているシニア男性の後ろ姿
写真=iStock.com/liebre
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この日をきっかけに、松竹さんは夫に1人での外出を禁止した。夫も不安があったようで、「夏子が付いてきてくれるほうが安心だ」と納得。2025年になると夫は、認知症が一気に進んだ。

「方向感覚がまるでなくなり、短い距離でも外に出ると、家と反対に歩き始めました。『もう怖いから出かけない、散歩も行かない』と言うようになり、時間の感覚も怪しくなっていました。困っていることを人に説明する能力も残っていませんでした。強がっていたのは、プライドが高いせいだと思います」

夫は何をするにも、どこへ行くにも、「夏子と一緒がいい」と言った。

「1月の行方不明から、主治医に勧められてデイサービス開始につなげるまで、一人では何もできない大きな子どもとなった夫にべったりとくっつかれ、私は地獄の日々でした。2025年4月末にデイサービスにつなげた後も、プライドが邪魔して素直になれず、夫は『なんで俺だけ行くんだよ』とキレていました」