日本人の宗教観は世界的に見れば「変」
私がこの原稿の仕上げに取りかかっている4月中旬は、パキスタンの仲介で行われた米国とイランの戦闘終結に向けた直接協議が決裂したところだ。米国からはヴァンス副大統領が出席、1979年のイラン革命で断交した後、最上級の高官による対面協議となったが、日付をまたぐ21時間におよぶ会議は合意に至らなかった。
現時点では協議の詳細は報じられていないが、イランの核開発とホルムズ海峡に関する意見の隔たりが大きかったようだ。協議の決裂後もホルムズ海峡の封鎖をめぐって、米国とイランの応酬は続いている。
日本のエネルギー資源の中東依存度は高く、そのほとんどがホルムズ海峡を通過するタンカーで運ばれてくる。今回のイラン情勢への対応は、日本のエネルギー安全保障においても非常に重要な問題だ。日米同盟を堅持するという従来の姿勢に加えて、高度な外交上の駆け引きが必要になるだろう。
日本はこれまでイランを含む中東全域と長期間にわたって友好関係を築いてきた。今回の問題でたびたびニュースに登場するイランのアラグチ外相は、駐日大使を務めた経験もある親日家だ。当時の名刺には「新久地」と漢字で書いてあったほどで、東日本大震災の被災地で炊き出しを行ったエピソードもよく知られている。今回も茂木敏充外相との個人的な交友関係から、たびたび電話会談が行われており、日本独自の外交の窓口となっている。
私も個人的にイランの知人は多く、親族も含めてペルシャ絨毯を愛用している。ペルシャ絨毯の緻密な仕事ぶりもそうだが、何となく、日本人はイランの人々と通じ合うところが多いような気がしている。
その一方で、中東各国の関係、たとえばイランとイスラエル、イランとアラブ諸国、イスラエルとレバノンといった個別の関係を理解するのは非常に難しい。休戦協議がまとまらなかった理由の一つとして、レバノンの扱いがある。
レバノンは面積でいえば岐阜県と同じくらいの小さな国だが、その中にキリスト教、イスラム教のさまざまな宗派の信者たちが複雑なモザイク状に分布している。過去には、各宗派に近い国々も巻き込んで激しい内戦が起きたこともある。ヒズボラは、82年に結成されたイスラム教シーア派の組織で、同じシーア派のイランの支援を受けたレバノンでは最も強力な武装勢力として知られ、イスラエルとはたびたび武力衝突を起こしている。今回、米国とイランの停戦が成立した後も、イスラエルがレバノンへの攻撃を続け、事態を複雑化させた。
一方で日本人は、宗教に対する考え方が寛容だ。強い信仰を持って宗教活動に取り組んでいる人もいるが、多くの日本人は、赤ちゃんが生まれると神社にお宮参りに出かけ、結婚式はキリスト教の教会で、葬式は仏教の寺で営む。年末はクリスマスを祝い、年が明ければ初詣と、どんな宗教でも受け入れてしまう。世界的に見れば、日本人と宗教の関係は非常に珍しいといえるだろう。だから、われわれは中東で起きていることの本質を理解するのが難しいのではないかと思っている。
ドナルド・トランプ米大統領も、キリスト教のプロテスタントの保守派である福音派に支えられていて、そうした支持者向けの発言も多い。その割に、自身をイエス・キリストに似せた生成AIの画像を公開して批判されたりしているのがよくわからない。宗教が絡む案件の対応は本当に難しい。
トランプ大統領はまた、ホルムズ海峡について「日本は助けてくれなかった」と述べているが、高市早苗首相は「コメントしない」としたうえで、イランと独自に交渉を続ける考えを表明した。今後どのように着地させるか、外交力を試されるだろう。
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