小泉フィーバー以上の大勝利になった総選挙

衆議院議員総選挙は自民党が単独で316議席を獲得する歴史的な圧勝だった。比例代表では81議席分の票数を獲得していたのだが、名簿に登録された候補者の数が足りず、14議席を他党に譲ることになった。私の記憶では、比例の候補者数が足りなくなるのは、2005年の小泉内閣での郵政選挙以来である。あのときでさえ、自民党は296議席で300には届かなかった。今回の勝利のすさまじさがわかる。

雪のために心配された投票率も56.26%と前回の選挙から2.41ポイント上昇した。これは、期日前投票が浸透してきたことも大きいだろう。

率直に言って、私もこれほどの大勝になるとは予測していなかった。私のふるさと長野県は、これまで旧立憲民主党の勢力も強く、自民党が5つの選挙区を独占するのは小選挙区制度が導入されてから初めてだ。

これまで与野党で議席が割れていた東京都も30選挙区で全勝。何よりも驚いたのは、歴史的に左派系の政党が強く、自民党が弱いとされていた沖縄県でも4選挙区で全勝できたことだ。接戦が予想された激戦区をすべて取れたことが大きい。これが小選挙区制度の怖さである。

投票日前には、報道各社の情勢分析や、各党による調査結果などさまざまな予想が飛び交うのだが、私は独自に激戦区の結果をいち早く知る方法を知っている。プレジデント読者だけにその方法を明かそう。当落線上で争うライバル同士の選挙事務所の電話番号を調べて、双方に「○○候補がもう心配で心配で仕方ないんです。情勢はどうでしょうか?」と電話をかけるのだ。そこでチェックすべきは、電話を受ける運動員の対応ではなく、背後の雑音だ。にぎやかに人の声が聞こえて活発な雰囲気が伝わってくれば、当選確実である。逆に、シーンと静まり返っていると、旗色が悪く落選の可能性が高い。これが、どんな評論家の解説よりも高確率で当たる。

しかし、大勝したからといって安心はできない。大切なのはこれからである。「勝って兜の緒を締めよ」ではないが、新人議員の活動によっては、再来年予定の次回の参院選で苦戦を強いられるだろう。実は、選挙前に自民党の若い新人候補の何人かと面談したのだが、少し不安になった。みんな頭もいいし、話も上手い。ただ、なぜ政治家を志したのかと質問すると、きれいにまとまった言葉が返ってくるだけで、具体的な政治活動のビジョンが伝わってこない。衆院議員にとって自分の選挙区は城下町のようなものだ。当選したら地元の不便な場所に橋を架けたいとか、地域を発展させるような企業を誘致したいとか、まちづくりのビジョンを持っていてほしいのだが、そういった部分までは手がまわっていなそうに見えた。

選挙区への思い入れが少ないと、当選後に地域の衆院議員ではなく、「東京の政治家」になってしまう。近年は特にこの傾向が強いと感じている。こうなると、地域とのつながりが薄くなって連続当選が難しくなる。そして結果的に地域の声が国政に届かなくなる。これは、政治家だけでなく、有権者にとってもよくない。当選3回くらいになるまでは、本会議と自分が所属する委員会がない日は、地元での活動を優先すべきだ。有権者との対話を重ねて政治家としての実力をつけてもらいたい。日本全体の未来を考えると同時に、自身の選挙区に尽くすことも政治家になるべき人の責務である。

私はかねて、小選挙区制度には反対の立場をとってきた。小選挙区は政治家個人ではなく政党を選ぶ選挙だ。だから、政治家個人が地域のために政策を考えなくても今回の高市旋風のような風が吹けば当選できてしまう。逆に風が吹かなければ簡単に落選する。これでは政治家も育たない。今回、中道改革連合の旧立憲民主党の候補者が小選挙区で惨敗した理由はいろいろあるが、いつも風まかせで与党批判以外はなにもしておらず、有権者からの信頼が得られなかったためだろう。

東京・永田町にある自民党の開票センターで、当選確実の候補者名に花が付けられている様子
勝利に違いないが
東京・永田町にある自民党の開票センターで、当選確実の候補者名に花が付けられている様子。今回の総選挙は自民党の大勝という結果となったが、飯島氏は新人議員の定着に危機感を覚えているようだ。

総選挙の争点は「高市でいいのか?」

今回の選挙は、小泉内閣時代の郵政選挙と比較されることもあるが、あのときは「郵政民営化」の是非を問うという政策的な争点があった。全選挙区に民営化に賛成・反対それぞれの立場の候補者がいて、有権者が選べるようにしたのである。今回の選挙ではそういった政策的な争点はなかったと思う。有権者が選択するポイントがあるとしたら、「高市首相は日本の総理大臣にふさわしいか」という一点のみだった。首相自身が有権者に対して自らの続投について信を問うというのは初めてではないか。

注目される公約として消費税の話題もあったが、高市首相の続投に対して信を問うだけでも、有権者は自民党を支持してくれたと思う。

(写真=時事通信フォト)

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