生成AIの次に来る「AIエージェント」は、調べるだけでなく作業まで完結させるAIだ。ホワイトカラーの椅子が静かに消え始めた今、中高年のビジネスパーソンは何を学び、どう動くべきか。経済学者の井上智洋さんに、雇用激変の実態と生き残りの道筋を聞いた――。

「答えるAI」から「作業するAI」への転換

チャットGPTが一般公開されたのは2022年11月のこと。日本国内で利用が急増したのは24年でした。最新の意識調査(ストックマーク「AI時代の働き方調査2026」)では、約9割のビジネスパーソンが業務のどこかで生成AIを活用していると回答しています。

しかし、私は今年の後半、さらに大きな変化が起きると考えています。「AIエージェント」の普及です。

生成AIとAIエージェントは、何が違うのでしょうか。簡単に言うと、生成AIは「答えるAI」です。「明日、新宿で飲み会に使えそうな居酒屋を教えて」と聞けば、候補を挙げてくれます。一方、AIエージェントは「作業するAI」です。居酒屋の提案だけでなく、予約を入れ、カレンダーへの登録からリマインダーの設定まで済ませてくれます。

これまでの生成AIはアイデアを考えること、調べること、文章をまとめることなどが中心でした。AIエージェントはそれに加えて、操作、手続き、確認までを代替します。その結果として、ホワイトカラーの雇用は激減するかもしれないのです。

チャットGPTやジェミニも、すでにエージェント的な機能を取り込み始めています。チャットGPTは調べて答えるだけの機能から、ブラウザを操作して作業まで進めるエージェント機能へと統合が進みました。ジェミニも複数の情報源をまたいで調べたり、接続したアプリを操作したりする方向に進化しています。生成AIからAIエージェントへの移行は、私たちが使っているツールの中で、すでに始まっているのです。

AIの進化も加速しています。現在、計算資源や電力をより効率よく使いながら学習させる研究が進んでおり、性能向上のコストは下がり続けています。チャットGPTを提供するオープンAIのサム・アルトマンCEOは「25年は人類にとって最後の“普通の年”になるだろう」という意味のことを語ったと伝えられています。今年以降、職場で起きる変化の速度と規模は、これまでとは次元が異なるものになるでしょう。

アメリカはすでに「AI失業時代」に突入

AIによる雇用の変化はどこから始まっているのでしょうか。最も早く、最も目に見える形で動いているのはアメリカです。私は25年を「AI失業元年」と位置づけていますが、これはあくまでアメリカについての見立てです。マクロで見れば失業率への影響はまだ限定的ですが、ミクロで見ると、特定の職種では雇用が減り、採用が抑制される動きがすでに出始めています。

象徴的なのがプログラミングの世界です。昨年、AIにプログラミングを担わせる「コーディングエージェント」が一気に広がり、プログラマーの生産性は以前の10倍に跳ね上がったと評価する人もいます。そうなると、実際に手を動かすコーディング作業を担う人材は、以前ほど必要ではなくなります。実際にアメリカでは、大学でコンピュータサイエンスを学んだエンジニアなど、引く手あまただった若手の仕事が減り始めています。

ただし、ソフトウエア業界全体で見ると、雇用はむしろ増えている面もあります。生産性が上がり開発コストが下がると、需要そのものが広がるからです。これは産業革命期に綿織物の生産性が上昇し、需要が増えたために、雇用が増大した構図と似ていますが、需要が飽和すればいずれ人は余ります。今は複雑な過渡期にあると見るべきでしょう。

他分野でも、雇用減の動きは広がっています。コールセンター、事務職、翻訳といった仕事がその代表例です。コールセンターでは顧客の問い合わせ内容を理解し、適切な回答を返すだけでなく、必要な手続きまで完結させるAIの導入が進んでいます。オペレーターが担っていた仕事の多くが、代替されつつあります。

(構成=渡辺一朗 イラストレーション=村田篤司)

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