「親に本当に申し訳ない」

入学金や授業料などの支払いから数日後、別の私大の繰り上げ合格連絡をうける。その私大も決して志望度が高い大学ではなかったが、比較的授業料が安いため、正規合格の大学を辞退して新たに入学金等を支払った。その後、実家から通える大学の繰り上げ合格、さらにより志望度が高い私大の繰り上げ合格があって都度納入金を支払っている。男性はこう振り返る。

「正規合格は納入期限まで10日くらい猶予があるけれど、繰り上げの場合は入金期限が2~3日後なんです。ほかを待つことはできないから、そのたびに家族に頭を下げて、両親は銀行や親戚など借りられるところからかき集めて支払ってくれました。入金期限ぎりぎりに何とか払えたと思ったら次の繰り上げが来ることが続いて、そのストレスはかなり大きかったです」

3月28日、第一志望だった公立大学医学部の追加合格が発表されたが、男性に連絡はなかった。その時点で最後に振り込みをした私大に入学することを決め、ようやく肩の荷が下りたという。

だが、その2日後の3月30日にまさかの事態が起こる。

「お昼前ごろに突然電話がなったんです。第一志望だった公立大からでした。最初は何の電話かわからなかったけれど、『追加合格です。明日までに納入金を支払えば入学できます』と言われて。うれしいんだけれど、全く想定していなかったので本当に驚きました」

すぐに父親に相談し、5校目となる入学金と授業料を支払った。

「公立大は私立に比べて6年間の学費がかなり安く済むので、結果的には本当に良かった。ただ、4校の私大に払った入学金など、計450万円ほどは返金されない見込みです。うちは普通の家庭なのでものすごい大金で、親に本当に申し訳ない。ほかの大学の結果を待たずにわずかな時間で数百万円を支払わなければいけないことも、100万円超の入学金が返金されないことも、なんとかならないかと思います」

文部科学省は昨年6月、全国の私立大学に対して「入学しない学生の納付する入学料に係る負担軽減のために必要な対応」を行うよう求める通知を出した。ただ、入学金を返金することを決めた大学はごく一部にとどまり、ほとんどの私大は追随しなかった。

先出の鈴村さんはこう指摘する。

「繰り上げ合格自体は避けられませんが、少なくても補欠の人数と順位は発表したうえで、現在どこまで繰り上げが回っているのかは透明化すべきです。今年はホームページ上では繰り上げ合格が終わったように見えながら、実際には繰り上げ連絡がずっと続いている大学もありました。受験生や保護者はそれに振り回されてしまうんです」

繰り上げ合格によって、受験生はうれしさと同時に、親への“申し訳なさ”も抱えてしまう。厳格な定員管理の影で、負担のしわ寄せは受験生と家族に集中している。

(AERA編集部・川口穣)

当記事は「AERA DIGITA」からの転載記事です。AERA DIGITALは『AERA』『週刊朝日』に掲載された話題を、分かりやすくまとめた記事をメインコンテンツにしています。元記事はこちら
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